もちろん、成田小学校の先生方が最初からこのような意識を持っていたわけではない。
「正直なところ、最初のころは、発音やイントネーションに神経質になっていました。でも、私たちの意識を大きく変えてくれる“事件”がありました」
あるとき、スリランカ出身のALTが、Thursday(木曜日)を「タースデイ」と発音したので、「サースデイ」に直してほしいと頼んだところ、激しい怒りを買ってしまった。おそらく、そのスリランカ出身のALTは、自分自身を否定されたように感じたのだろう。それ以来、日本人なんだから“ジャパニーズイングリッシュ”でも相手に通じれば構わないのではないかと、思い直したという。
「いままでは、正しい発音でなければ英語ではないという考えが主流でしたが、いまは、使われなければ英語ではないという意識に、序々に変わってきています。英語も“道具”。使ってはじめて価値が生まれるものだと私も思います」
実際、発音に強くこだわらなくなった結果、先生方の間にも英語に対する自信が高まり、外国人と接する経験を重ねた結果、外国人と話すことへの抵抗もなくなってきた。「英語を使って簡単な話をすることができる」教員が、研究開始前は19.7%だったのに対し、研究開始後3年経た98年度には80.8%にまで増えてきている。研究開始前は外国人と話をすることへの抵抗感を88.9%が持っていたのに、98年度には61.5%までに減っている。先生方の自信が子どもたちの自信につながっていることは、想像に難くない。
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