司会 小学校英語の指導をだれがするのか、以下、4つの考え方があると思います。
(1) ALT、(2) 小学校の担任の先生、(3) 英語の免許を持っているので、中学の先生、(4) (1)~(3)では無理だから、地域の人材や民間人にしてもらう。文科省内でも、中教審の専門委員の間でも考え方は色々です。皆さんはどのように思われますか?
松香 東京のある区では担任に教えるように厳命し、区は指針を配り指導内容の詳細は担任に任せて実施しました。私は何度かその区の授業を見ましたが、まずlistenとか、lineとか、circleとか、ひと言英語を使わせ、それをマスターしたら、Big
circleなどの2語の言葉を練習させ、Listen to meは3語だからまだ使ってはいけない、というふうな教え方でした。音声教材などを活用することもなく、全部担任からの口移しです。その結果、保護者の署名運動が起き、担任等の指導に、重い警告が発せられました。
こういうことが現実に起こっているので、担任だけの指導というのは怖いです。保護者のなかには英語ができる人はかなりいますし、きちんと指導されていないと感じれば、黙ってはいません。したがって、私は、担任だけの指導でもALTだけの指導でもなく、両方の協力が必要だと考えます。
しかし、50%を担任が担おうとするとき、最初から45分の授業は組みにくい。最初は10分~15分から練習し、1学期に1、2回は担任が蓄積した英語を子どもたちが使うALTの授業を行い、ほめてもらえるようなチャンスをつくるのがいちばんよいと思います。
田尻 現状で何ができるかというと、松香先生がおっしゃるように、ALTと担任、両方が必要だと思いますし、なるべく専門のALTを育てていく必要があります。
しかしいまのALTは短期間でやめていく傾向にあります。それは、自分たちの使われ方に非常に不満を持っているからです。担任の先生の育成はもちろんですが、同時にALTも育てる。そうした意識を持つ必要があります。育てながらも、「とにかく始めよう」というスタンスで臨むべきだと思います。吉田さん(司会者)が言われた指導者の(1)~(4)、すべてのパターンも試し、着地点を探していきたい。
伯井 横浜市が現在進めている「小学校英語活動推進校」のコンセプトは「地域人材の活用」です。手伝ってくださる地域の方々には、学校によって多少違いはありますが、交通費等も含めて、基本的に1日2千円の謝礼でお願いしています。人材は、いちばん多い学校で16人、少ないところで1人が登録しています。人の集め方は、次の4パターンです。
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「学校便り」で呼びかけて募集する。これがいちばんオーソドックスなパターン |
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「学校支援ボランティア」がいる学校は、そのなかで英語が堪能な人に依頼する |
(3) |
横浜市国際交流協会(外国籍の子どもで、全く日本語ができない子どものための通訳ボランティア等を派遣してくれる団体)などとタイアップして、人材派遣をお願いする |
(4) |
近所の大学・高校の生徒・学生にボランティアをお願いして人を集めている、です。 |
現時点の推進校は市内にある354小学校うちの1割強です。この段階ではなんとか人材が集まっても、実施校が市全体に広がったときに、それぞれの学校がどれだけ確保できるかは大きな課題です。さらに、地域人材はあくまでも「サポーター」です。当然、担任が指導の主体となりますが、現状ではまだ担任の力量にはかなりの差があります。こうした担任のかかわりや研修体勢づくりは、走りながら考えているところです。
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