ベネッセ教育総合研究所
私立日本大学山形中学校
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IT教材ありきでなく
教科の必然性に沿った授業実践
 紹介した美術の授業で「たねっとランド」を使ったねらいを柏瀬先生は次のように語る。
「作品の鑑賞には、言葉で表現する力が問われますが、かしこまった形式の美術鑑賞は、生徒たちはあまり得意ではありません。しかしパソコン上の掲示板だと普段の話し言葉や顔文字を使って気軽に、構えずに書いてくれます。このことで生徒の『素の姿』を見ることができます」
「たねっとランド」を使わなければ、黒板などに作品を貼り出して、感想を紙に書いて提出することになるだろう。しかし、これでは時間がかかるだけではなく、あまり発想がふくらんでいかないと柏瀬先生は考えている。 「たねっとランド」であれば、合成写真を掲示する作業、他の生徒の写真を見て感想をパソコンで入力する作業、自分の写真に対して他の生徒が書いてくれた感想を読む作業、これらが短時間に切れ目なく進められる。また、もらった感想をもとに自分の作品を合成し直し、再度「たねっとランド」に掲示することもできる。
 こうした「双方向のコミュニケーション、即時性、データの共有」が「たねっとランド」のメリットだと渡邊さんも考えている。
 しかし、今回のIT活用の授業も「たねっとランド」主導で考えられたものではない。生徒にとって、楽しく、また大きな効果が出るような「作品の鑑賞」をするためには、どのようなツールが最適なのか。そういう発想から考えられている。
「美術の授業ですから、本来なら実際の制作物で勝負したいところですが、お金も時間も限られています。デジタル画像が加工できるIT教材を一つの素材として活用しています」(柏瀬先生)
 境野中学校の先生方の間では、日常的にITに関する情報を交換し、普段の雑談のなかでも「こうしたら?」という話が出てくる。こうした職員室の雰囲気も後押しし、美術で培ったIT活用の力は、他教科の実践にも生かされている。
 代表的なものが前ページで紹介している数学道徳の事例だ。とくに数学ではIT教材を使うのは難しいという見方も多いが、それまでプリントを使って行っていたことを、よりうまく運用できないかという発想で効果を上げることができた。「たねっとランド」のデータ共有、双方向性という特性を生かした事例といえる。
 そのほかの事例も事欠かない。音楽科では、合唱コンクールの選曲をするとき、候補曲を各自が「サーバ」から自由に選択し、マルチメディアソフトで聴きながら感想をまとめるために全学年で活用した。「総合的な学習の時間」では、個人テーマで追究した結果を、境野中学校のホームページにリンクを張って発表会を行った。


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