特集 カリキュラムから考える小中連携
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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発達段階の変化を踏まえ5年生から教科担任制に

 品川区の小中連携のもう1つの特徴は、今の子どもの身体面、精神面の発達などを踏まえて、義務教育の9年間を、1年生から4年生、5年生から7年生、8、9年生という「4・3・2」の3段階で捉えていることだ(図2)。4年生までは学級担任制だが、5年生以降は教科担任制としている。つまり、従来の学校であれば、中1(7年生)から始まる教科担任制を、5年生の段階にまで早めている。
  菅谷校長は、「『4・3・2』の区分は、品川区オリジナルのアイデアではない」と話す。4年生と5年生を境に子どもの自尊感情が大きく低下することや、生理的発達に著しい変化が見られることは、早稲田大の安彦忠彦教授も指摘している(P.2~5参照)。

図2
日野学園では、5年生から教科担任制の授業となる。学習の目標は3つの段階に分けて設定し、授業の目的を明確にしている

  また、00年度から小中一貫教育に取り組む広島県呉市の調査からも、同様の結果が明らかになっている。品川区の独自調査でも、4年生までと5年生以降で同様の心理的・生理的変化が見られ、「4・3・2」区分の導入に妥当性が認められたという。
  「4年生までは学級担任制、5年生以降を教科担任制にしたのは、4年生までの段階では、国語の力を伸ばす、算数の力を伸ばすといった、個別の教科の学力向上ではなく、学級担任が子どものさまざまな学習活動や学校生活に目を配りながら、全人的に子どもの力を伸ばしていくことが重要だからです。
  5年生以降になると、教科の専門的な内容に対する興味・関心がより高まるため、教科担任制の方が子どもの発達段階に適合していると判断しました」
  このシステムで重要となるのは、学級担任制から教科担任制へと移行する5~7年生の指導体制の工夫だ。いわゆる「中1ギャップ」は、中学校に入ると教科担任制となったり、授業の進度が急に速くなったり、学ぶ内容が抽象度の高いものになるといった、小学校と中学校との間の「段差」に起因しているといわれる。この段差が解消されないまま5年生から教科担任制を導入したとしても、それでは新たに「5年生ギャップ」が生まれるだけとなってしまう。
  そこで日野学園では、生徒が徐々に中学校レベルの授業に慣れるように、授業の進め方を工夫している。
  「5年生になった途端に、いきなり中学校の教師が教室に来て、中学校流の教え方をしたら、子どもは不安を抱くでしょう。そこで、学習進度は、5、6年生の間は従来の小学校のスピードから始めて、徐々に速めるようにし、中学校の進度に無理なく慣れるようにしています」


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