▲にしじま・ひろし◎東京大大学院教育学研究科博士課程修了後、現職(4月より首都大学東京都市教養学部准教授)。編著書に『部活動―その現状とこれからのあり方』(学事出版)。
▲ながしま・あきら◎教師歴14年。保健体育科担当。生活指導担当。初任校では、特別支援学級の部活指導のほか、バスケットボール部やタッチラグビー部の創部に尽力する。前任校では高校・大学時代のラグビー経験を生かしてラグビー部を創部。赴任3校目の同校でもラグビー部の顧問を務める。
3月に告示された新学習指導要領では、 部活動の意義や留意点が初めて総則に盛り込まれた。 教師の任意の指導と善意に支えられてきた部活動は、 今、生徒数の減少や外部指導者との連携など多くの課題を抱えている。 学校教育の一環としての部活動を、教師がどのように捉え、指導していくべきかを考える。
東京大大学院教育学研究科助教(4月より首都大学東京准教授) 西島央(ひろし) × 東京都世田谷区立千歳中学校教諭 長島章
教育課程外の任意の活動でありながら、9割を超える中学生が参加している部活動(注1)。 多くの教師がその意義を認めるが、顧問として指導する場合の考え方はさまざまだ。 そこで、部活動に詳しい西島央先生と運動部の顧問をしている長島章先生に 部活動指導の現状と課題を語ってもらった。
西島 私たちの研究グループは2007年の夏に「部活動の指導・運営に関するアンケート」(P.15参照)を実施しました。その報告書の中に、生徒は何を楽しみに部活動をしているのかを尋ねた00年度の調査結果があります。生徒の約4割が「練習や活動」、約3割が「おしゃべり」と回答していました。部活動には、技術を上達させること以外にも、同じ興味を持つ仲間が集まる「居場所」としての意義が大きいのでしょう。
長島 確かに、部活動のあと、仲間と部室で話すなど、授業では味わえない楽しみがあると思います。ただ、多くの教師はそれだけで終わってほしくないと考えています。「生徒が成長していく姿を見たい」「正しい生活習慣を身につけてほしい」という思いから、教師は部活動を指導しています。
西島 それらは、先生方が部活動を肯定的に捉えている点ですね。
長島 授業と部活動では、生徒の見え方が違います。生徒を見ていて一番輝いていると感じるのは、教師に褒められたときです。生徒はいろいろな先生に「認められたい」と思っているのではないでしょうか。授業中は目立たない生徒が、部活動で頑張ったり力を発揮したりすることで教師に認めてもらえるのです。技術を磨くという目的ならスポーツクラブや習い事がありますが、教師の目は届かず、活躍しても学校の中ではさほど目立ちません。しかし、部活動なら、教師が見ていて「うまいな」「頑張っているな」と声をかけたり、大会での入賞やレギュラー獲得の際には「すごいな」と褒めたりと、教師と生徒がコミュニケーションを図るきっかけが増えます。これが部活動を指導する最大のメリットだと思います。
西島 生徒が教科学習以外の場面で力を発揮している姿を見られることが、教師にとって部活指導の重要なポイントなのですね。