▲三辻陽夫
Mitsuji Akio財団法人日本中学校体育連盟専務理事
学習指導要領での部活動の位置づけの変化
これまで半世紀以上に渡って部活動が行われてきましたが、学習指導要領の中での位置づけは、そのときどきによって変わってきました(P.15図1)。例えば、1969年の改訂時には、特別活動の一つとして「クラブ活動」が必修の活動として設定され、放課後の「部活動」は希望する生徒のみ参加するというものでした。その後、89年の改訂では、部活動への参加によってクラブ活動を履修したものとみなす、いわゆる「部活代替制度」が認められました。 そして、98年の改訂(現行の学習指導要領)では、特別活動としてのクラブ活動が廃止され、部活動は学校教育活動の一環として実施されるよう配慮されていました。 行政と日本中学校体育連盟(以下、中体連)の関係も時代と共に変化しています。例えば、以前は部活動に関するさまざまな通達は、文部科学省から各教育委員会に送られていました。現在は中体連が関連する部活動について関係機関の指導を受けながら自主的に通知する形式となっています。 中体連では、部活動は生徒の「健全育成」「体力向上」「生きる力の向上」、そして教師と生徒、または生徒同士の人間関係を育てる上で不可欠な活動と考えています。今回の学習指導要領の改訂に際しても、「教育活動の『一環』」にとどまらず、「教育活動の『一つ』」として明確に位置づけてもらえるように働きかけました。今回の学習指導要領の改訂で、部活動の意義が明記されたことはとても重要な意味があると思います。
生徒と一緒に学ぶ姿勢を持って
地域のスポーツクラブとの連携や顧問を担当する教師の負担など、部活動を取り巻く課題は多数存在します。地域に強いスポーツクラブがあれば、生徒がそちらに流れてしまうおそれもありますが、部活動と地域のスポーツクラブとでは位置づけが異なると考えています。部活動はあくまでも学校の教育活動として行われているものです。その前提を踏まえた上で、今後はスポーツクラブのスタッフと協力体制をつくるなど、上手に外部とも連携していく必要があると思います。 教師の負担という点では、「技術指導力がないから顧問はできない」と考える先生が多いと思います。しかし、「指導しなければ」と思いすぎず、生徒と共に「学ぶ」という姿勢がまず大切なのではないでしょうか。なぜなら、部活動の教育上の目的は「生きる力」の向上にあるからです。教科指導とは違った形で生徒と接することができるよい機会にもなりますし、試合などで一緒に戦い、感動した経験は、生徒と教師どちらにとっても貴重な体験となるはずです。先生方には是非、生徒の中に「生涯に渡ってスポーツを楽しむ姿勢の基礎」を育ててほしいと思います。