特集1:生徒指導:つながり、深める「部活」指導

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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【対談を終えて】

部活指導の課題は
教師の負担、指導技術、少子化対応


東京大大学院教育学研究科助教 西島央

新学習指導要領で部活動の意義を明記

 この10年、「総合型地域スポーツクラブ」を各中学校区に整備するという国の方針の下、部活動の役割は学校外に移行する流れにありました。その背景には、社会体育の充実や完全学校週五日制の導入、オリンピックでのメダル数の減少などが挙げられます。高校を卒業した途端、スポーツや文化活動をやめてしまう若者の多さへの危惧もありました。
 ところが、この動きはなかなか地域に根付かず、部活動はそのまま中学校で行われているのが現状です。多くの教師が部活動の必要性を感じ、手放さなかったことが要因の一つだと考えられます。私たちの調査では、主に土日だけ指導をする教師でも、部活動の必要性を感じている割合が高いという結果が出ました。しかし、部活動は教育課程外の教育活動であるため、熱心な教師は自由に指導できる半面、断る教師がいるのも事実です。そこで指導のバラツキを小さくするように、教育課程との関連を図る方針へ転換してきたのです。新学習指導要領でも、依然として教育課程外ではあるものの、学校教育の一環として部活動の意義を示し、教育課程と関連付けるよう留意すること、としています。

地域に合った部活動をつくることが大切

 長島先生とのお話を整理すると、部活動を教育課程に関連付ける際の課題は三つあります。一つは時間の問題です。部活動を教育課程と関連付けて、学校教育の一環としてどの中学校でも実施していくとなると、人の配置や授業負担の軽減などの対策が必要になります。
 二つめはスキルの問題です。部活動の指導は授業とは別の指導力が求められます。一定の指導技術や管理・運営ノウハウを教師が学ぶ機会が必要であり、これらの体制をどう整えるかを学校や地域ごとに考えていくことも大切です。
 三つめは少子化への対応です。生徒も教師も少なくなったことで、サッカーや野球など団体競技の人数がそろわない、部の種類が限られてしまう、などが考えられます。廃部にせざるをえないケースもあるでしょう。その場合、複数の学校の生徒が集まって合同で活動する方法もあります。ただ、教育課程との関連を深めようとすると、内申書を書くために部活動に関する情報を学校間でどのように共有するのか、進路指導とのかかわりが大きな課題になるでしょう。
 今後の部活指導をどうするかは、新しい学習指導要領の総則に示された方針(P.15図1)に沿って、それぞれ自治体や学校が考えることになります。地域や学校、教師によって事情は異なりますから、方策はいろいろと考えられそうです。例えば、隣り合う中学校がとても離れている地域では、地域の社会体育と連携して、生徒と大人が一緒に活動しているケースがあります。夕方4時から6時までは中学生だけで活動し、6時以降は大人も参加するクラブになるといった形態です。また、各校が部活動と教育課程をどこまで密接に関連付けるかによって、部活動だけでなく、生徒指導や進路指導の在り方も変わっていくでしょう。
 部活動と教育課程の関連や意義が学習指導要領に明記されるのは、今回の改訂が初めてとなります。まさに今が過渡期で、各校、各教師が部活動とその指導の新しい形を積極的に発信し、共有していくことが求められます。


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