▲藤田晃之 ふじたてるゆき◎1993年筑波大大学院博士課程教育学研究科単位取得退学。中央学院大商学部助教授、筑波大大学院博士課程人間総合科学研究科准教授などを経て、08年4月から現職。博士(教育学)。
国立教育政策研究所 生徒指導研究センター総括研究官 藤田晃之(てるゆき)
キャリア教育の基本的な考え方とはどのようなものか、 身につけさせるべき四つの能力領域(P.14参照)を、教科指導の中でどのように捉え直し、生徒に働きかければよいのか。 国立教育政策研究所の藤田晃之総括研究官に聞いた。
「キャリア」の語源をたどると「轍(わだち)」という意味があります。過去から現在、そして未来へとつながっている道―つまり「生き方そのもの」といってよいでしょう。ただ、人生経験の浅い中学生にとって、「どのように生きていくのか」「そのために身につけなければならない力は何か」と自分自身に問いかけるためには、考える材料が少なすぎます。そこで、学校がプログラムを組み、考えさせるのが「キャリア教育」です。 では、「キャリア教育」と「進路指導」は何が違うのでしょう。従来の進路指導では、少しでも社会的に評価の高い高校に生徒を合格させることに重きを置いてきました(図1)。1970年代、当時の文部省が都道府県教育委員会等に対して、「進路指導が出口指導ではいけない」「本来の進路指導(注1)に改善しよう」という通達を2回出しています。それにもかかわらず、中学校には通達の方向性は根付きませんでした。
ならば、「本来の進路指導」と「キャリア教育」はイコールなのかというと、そういうわけでもありません。キャリア教育にはいわゆる「職業教育」が含まれます。それも、単に職業技能を身につけるだけにとどまらず、その技能を持って生きていくことがどのような意味を持つのか、社会においてその技能が果たす役割は何かといったことをも見いだしていく教育です。 つまり、キャリア教育は「本来的な進路指導」プラス「本来的な職業教育」なのです。これを学校教育のカリキュラム全体と調和するように工夫しながら統合していくことが、今、求められていることだと思います。