しかし、この方針はその後わずか数年でぶれを見せ始める。98年答申における教養・専門基礎教育の推進という流れとは裏腹に、法科大学院構想や専門職大学院構想など、高度の専門技能の育成を目指す大学院改革案が次々に具体化するのである。その原因となったのは日本経済の低迷に象徴される経済・社会情勢の急変であった。特に、
(1)先端科学技術分野の競争力の向上
(2)高度職業人の養成
の2点が、経済界を中心とする社会の側から強く要請されるようになった。また、00年頃からは、大学改革に関連する議論が、急速に国公立大を対象としたものに収斂していった。なぜなら、右に挙げた(1)先端科学技術分野の競争力の向上、(2)高度職業人の養成、のいずれについても、資金・人材に余裕のある国公立大の方が、私立大に比べて圧倒的な優位を占めていたからである。トップ30大学構想で話題となった、01年の『遠山プラン』は、こうした新たな社会情勢を色濃く反映したものだった。
このように、現在進みつつある大学改革においては、文部科学省が98年以前のグランドデザインに基づいて推進してきた改革と、00年度以降の社会情勢の変化が要請した新たな改革が、同時並行的に進行している。この事態こそ、改革のグランドデザインを見えにくくし、学校現場の不安をかき立てている要因なのである。
改革の現状を正確に把握するためには、こうした基本構造を認識した上で個々の改革案の内容を検討することが肝要である。ここでは高校現場にも関係が深いと思われる
・国公立大の再編・統合と独立行政法人化
・COE構想
・法科大学院・専門職大学院構想
の3つの改革について見ていきたい。
<前ページへ 次ページへ>
|