【2】国公立大の再編・統合と独立行政法人化 個性化の進展の一方で地域によっては問題も
国公立大の再編・統合の動きを語る上でまず確認しなければならないのは、統合を検討している国公立大の大多数が、医薬系を中心とした単科大学と医薬系学部を持たない複合大学との統合であるという点である。また、学部レベルでの統合について見ると、教員養成系学部の広域統合が全国的に検討されていることに気付かされる。国公立大の再編とは言いつつも、その内実は小規模学部の再編としての性格を色濃く持っているのである。
この両者に共通する課題は、言うまでもなく経営規模の拡大と効率化である。双方とも学部の定員が100人前後と、経営効率の観点から見て明らかに問題を抱えているケースが多い。また、教員養成系学部については、卒業生で教員になれる者が3割前後にまで落ち込み、学部の存在意義自体が問われている大学すら存在する。統合により規模を拡大し、教育の質を確保することは教員養成機関としての生き残りをかけた課題なのである。
しかし、これらの学部の再編・統合に際しては、資源の効率利用以外に、その理由が明確に語られていないため、大学の地元自治体や教育関係者は大きな不安を抱いている。特に、教員養成系学部の広域統合については、「教育立県」を掲げていながら、地元に教員養成系学部がない地方自治体が現実に出た場合どうするのか、あるいは、効率性の観点のみで教育を語ること自体が許されるのか、といった問題に対して明確な回答が与えられていない。そのため、多くの自治体から教員養成系学部の統合に対して反対の声が上がっており、広域統合を巡る議論はあまり進捗していないのが現状である。
一方、大学の在り方が変わるという意味では、国立大の独立行政法人化の動きを見逃すわけにはいかない。経営効率の改善という目的はもちろんあるが、その主な目的は、これまで文部科学省が握ってきたヒト・モノ・カネの学内での配分を、各大学の自主裁量に任せることにある。従来の学校行政においては、大学が使う予算や人、教育内容に至るまで国が厳しく管理する体制ができていた。しかし、独立行政法人化が達成された後には、一定の枠組みの下で、大学は独自の判断で講座数の弾力的な設定や外部資金の導入、さらには授業料の設定や自由な予算配分も可能になる。比較的画一的に運営されてきた国立大が、これにより個性化の傾向を強めることは間違いない。現在、03年3月の通常国会への提出を目標に、文部科学省は「国立大学法人法」の作成を進めている。
<前ページへ 次ページへ>
|