VIEW21 2002.12  大学改革は高校現場の指導をどう変えるのか?

1 基調講演
大学改革のグランドデザイン

 座談会の開催に当たり、まず天野教授より最近の大学改革を巡る状況について基調講演をいただいた。個々の改革案の内容を理解すると共に、改革全体を見通す視座についても確認したい。


【1】改革の全体像
内実はグランドデザインなき改革

 大学改革の時代と言われて久しい。社会情勢の急激な変化が見られたここ10年ほどは、その動きが特に激しい時代であった。議論の前提として、まずはこの目まぐるしい変化の全体像を把握したい。
 一般的に、大学改革のスタートは1984年、当時の中曽根内閣が教育審議会を設置し、その最終答申に基づき大学審議会が設立された時点に求められる。以来、一般教養課程の廃止を打ち出した91年の『大学教育の改善について』、課題探究能力の育成を前面に打ち出した98年の『21世紀の大学像と今後の改革方策について』など、大学審議会は矢継ぎ早に大学改革のプランを打ち出してきた。
 一連の答申の背景には、大学進学率の上昇を受けて、教育機関としての大学の在り方を見直さなければならないという危機感があった。18歳人口に対する大学進学率は年々上昇し、90年は約36%だったものが、わずか10年余りで50%近くにも達した。そして、これに伴う学生の質の多様化が「多様な学力を持つ学生の教育をどのように行うのか」という問題を提起したのである。98年の答申はこのような課題認識に基づく答申の集大成と言える。そこでは、学部・大学院の機能分化を前提とした上で、学部教育における「課題探究能力の育成」が掲げられた。すなわち、91年の一般教養課程の廃止以来進んできた学部教育の専門教育化の流れを反省し、改めて教養・専門基礎教育重視へと切り替えることが明言されたわけである。98年時点における大学改革のグランドデザインは、このように比較的明確なものであったと言えよう。


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国立学校財務センター研究部長・教授
天野郁夫
Amano Ikuo
名古屋大助教授、東京大教育学部長を経て現職。専攻は教育社会学。『大学―挑戦の時代』(東京大学出版会)など著書多数。

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