ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
生徒の多面的把握が指導を変える
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Chapter 1
重要性が増す生徒の多面的把握
加速する生徒の気質・学力の変化
 03年度新課程への移行を機に、多くの教師が生徒把握の重要性が増したと考えている。その背景には、カリキュラムの変更や授業時間の減少など、教育を巡る環境要因も無視できないが、むしろ多くの教師が着目しているのは「新課程教育を受けた新入生が初めて高校に入学する」という事実である。
 この変化が高校現場に与える影響としては、主に以下の二つが指摘されている。
 一つは、学習指導の前提となる生徒の気質が大きく変化するのではないかという点である。中学校の02年度新課程においては、知識重視型から思考力育成型授業への転換が明確に謳われ、授業内容の精選や授業スタイルの改善が現場に一層強く求められるようになった。新入生の気質変化は旧課程の時代から徐々に進行しつつあったが、今回の新課程への移行はその流れをさらに加速するもと思われる。つまり、「家庭学習習慣の未確立」や「自学自習姿勢の欠如」「講義型授業への耐性のなさ」などがこれまで以上に深刻化し、導入期指導の再構築が高校現場の大きな課題となるのである。
 もう一つは、新入生の学力が今まで以上に多様化するのではないかという点である。中学校の02年度新課程においては、カリキュラムに占める選択科目のウエートが大幅に増加している。つまり、同じ中学校を卒業していても、履修の仕方によっては、生徒により身に付けている知識・学力に大きな違いがあることが十分考えられるのである。例えば、数学では「2次方程式の解の公式」「2次方程式に関する文章題」などが選択制となり、生徒による履修/未履修の差が問題になると予想されている。
 また、科目履修時間の違いそのものが学力の違いを生み出す危険性も指摘されており、特に、学習時間と密接な関連のある基礎的な計算スキルなどは、生徒によって大幅なレベル差が生じている可能性もある。「このままでは一斉授業の形態そのものが揺らぎかねない」という現場の危惧は、あながち杞憂とは言い切れまい(「新課程で、高校の『教科指導』はどう変わるのか」本誌2002.vol.6 p.14~21参照)。
 「授業時間の3割削減」という言葉に象徴されるように、新課程への移行に当たっては新入生の「学力低下」の危惧が大きくクローズアップされた。しかし、多くの高校において問題となるのは、むしろ従来の指導ノウハウを帳消しにしかねない「学力多様化」ではないだろうか。
 
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