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新課程のスタート状況と今後の展望
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2割弱の高校がシラバスを作成済み6割が作成予定
 SIが、「どんな学校にしたいのか」「どんな生徒を育てたいのか」という学校の基本目標=学校の目指す姿を明確にするものであるとすれば、シラバスは、その基本目標達成のための具体的な実行プランと言えよう。本誌でも紹介したように(昨年度9月号10月号2月号など)、シラバス作成の事例に触れることが多くなり、シラバスへの関心が高まっていることがうかがわれるが、新課程に対応したシラバス作成についても、「全科目作成済み」は2割に満たないとは言え、未着手あるいは特定科目だけ作成済みで今後「全科目作成予定」を含めれば、全体で63.1%に達している(資料2)。まったく作成の予定がないという割合は2割程度にすぎない。
 シラバス作成の目的を見ると(資料3)、「授業・指導の質の改善のため」「生徒の学習意欲を高め、主体的な学習を促すため」が、それぞれ73.1%、65.4%とかなり高いスコアを示しており、次いで、「教師による指導のバラツキをなくすため」52.1%、「学校としての指導ノウハウを組織的に構築していくため」47.6%と続く。新課程を乗り切っていくためには、後で述べるような授業時間数確保といった、どちらかと言えば、量的な対応だけでなく、質的な対応の重要性が強く意識されており、その意味でのシラバス作成への期待が高いことが分かる。
 公立校では、私立校と比べて、学習意欲の向上に役立てたいという意向が強く表れている。他方、私立校では、教師による指導のバラツキの是正や指導ノウハウの組織的構築のためとする割合が、人事異動が激しく組織的に指導法の構築やその伝承を行っていくことが難しいとされる公立校よりもむしろ高いことは注目に値しよう。
 資料4のシラバスの共有・公開についての問いでは、保護者への配付は、公立校で18.7%、私立校で27.9%になっているが、資料3では、「保護者へのアピールと説明責任」のスコアが、公立校、私立校共に4割となっている。これは生徒の配付分が保護者にも届くことを見越しての数字であろう。
 生徒への配付は、公立校で68.9%、私立校で43.4%であり、必ずしも生徒がシラバスを活用して学習することが想定されているわけではない。
 また、教師間によるシラバスの共有についても、「教科内の共有」でさえ3割程度にとどまっている。シラバス作成の効果は、どんなシラバスをつくるかということのみならず、それをどのように活用するかに大きく左右されることは論を待たない。シラバスの活用の具体的な在り方については、今後の検討課題として残している高校が少なくないことがうかがわれる。
資料2、3、4
 
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