では、より良い情報提供を実現するためにはどのような視点が求められるのだろうか。少なくとも次の4点について改めて確認しておきたい。
1 情報公開に対する教師の意識を高める
まず、学校の広報活動、ひいては情報開示に対する教師の意識改革を図りたい。社会的に「説明責任の時代」の到来と言われて久しいが、残念ながら学校現場では未だにその点に対する認知が浸透していない。単に「生徒募集のため」といった意味付けを越えて、「地域社会に対する学校の説明責任を果たす」という意識を教師自身がまず持つ必要があるだろう。
実際、既に多くの学校で自己点検・評価が行われているが、学校の外部評価も導入の方向で検討されている。教師一人ひとりが自分自身の問題として、外部に対する説明責任を果たすことが要求される。また、学区再編に伴う学校間競争の激化が、学校の広報に対する姿勢を問い直す契機になる場合もあるだろう。開かれた学校づくりは、まさに学校の生き残りをかけた課題であるのだ。
2 目的・対象を明らかにする
では、実際にどのような手法を用いて情報を開示すればよいのか。
まず必要なのは、情報開示の対象と目的を明確にすることだろう。 例えば、学校説明会という取り組みについて見ると、多くの学校ではそれを、中学生とその保護者に対する説明の機会としか捉えていない。しかし、同じ学校説明会でも地域住民による学校評価をより本格的に推進するという目的を持たせるなら、地域の人々を招待したり、学校評議員の参加を求めることも必要になってくるだろう。
一方、対象を中学生に絞った場合は、説明手法そのものの見直しを図りたい。教育理念やカリキュラムを管理職が説明するというスタイルの学校はかなり多いが、後出の西京高校のように、在校生が中学生に直接語り掛ける場をつくる、あるいは模擬授業を実演するなどの工夫で中学生にはリアリティのある説明となるはずだ。
3 年間を通した広報戦略を持つ
個々の活動レベルでの工夫と並行して、どの情報をどのタイミングで提供するのか、年間を通じた広報活動に戦略性を持たせたい。例えば、年1回の学校説明会を春と秋の2回に分け、春には今年度の高校入試選抜の結果や、学校としての理念を、秋には次年度の高校入試選抜を見据えた情報や、実際に入学してからの細かな学校生活の情報などを提供する、という手法も考えられる。次ページの洛北高校の事例を参考にしたい。
それは当然、中学校訪問やオープンスクール、PTA総会といった他の活動も含めて、戦略性を見直すことでもある。同じような目的・内容の情報開示を何度も行っていないか、情報提供が一時期に集中していないか、といった視点で、今一度広報戦略を見直したい。
4 内部の組織力が広報活動の質を高める
最後に、広報活動の全体設計の中に、広報活動を学校の内部改革に結び付ける視点を組み込んでおきたい。広報というと、一方的に情報を外部に発信することばかりが注目されがちである。しかし、学校の広報活動に本当に求められているのは、発信した情報に対する外部の反応をきちんと受け止め、教育活動の現状把握・課題分析を行い、それを改善につなげていく姿勢である。
このような活動を可能にするには、情報のフィードバックを組織的に補完するような方法を取り入れることが不可欠となる。後出の西京高校では広報活動を一元的に管掌する組織として「開設準備室」が機能する体制が整っている。また、既存の分掌をベースに広報活動を組み立てた山形東高校の場合も、分掌横断的な調整機関として「総務委員会」を設けている。こうした組織があることで、外部からの意見を確実に学校改善に生かす道が保証されているわけだ。
一連のサイクルが確立すれば、職員会議等での話し合いにも具体性が生まれ、広報の質も自ずと向上するはずだ。それは、学校に対する信頼感と期待感を高めると共に、学校の教育活動全体を活性化することにもつながるはずである。
対外的な戦略と内部改革へつなげる仕掛け。次に、この二つの視点を学校現場の実践事例で見ていきたい。
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