指導変革の軌跡 三重県立川越高校「自立した学習者を育てる」

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「かがやき―学習強化チーム」で主体的な学びに結び付ける

 新しい取り組みを取り入れながら、同校の不易である「受験は団体戦」はもちろん継続している。代表的な取り組みは、小誌05年10月号でも取り上げた「かがやき―学習強化チーム」だ。3年生は夏休み直前と12月、2年生は夏休みと春休みの2回、それぞれ1週間~10日間かけて行う校内自学自習である。
 期間が決まっているだけで、参加は自由。学習時間も内容もすべて生徒に任される。下校時刻になると、生徒は「学習実績表」にその日に取り組んだ教科と内容、時間を記入し、「今日の収穫」として感想を書く。教師は毎日集めて、アドバイスやコメントをつけて返す。「ビフォー・アフター」として、実施前には参加目標、終了後には感想を書かせる(図2)。07年度の3年生は200名以上が参加した。

図2

 「『友だちに負けられないと頑張った』など、まわりの雰囲気に刺激されて良い意味でのライバル意識が芽生えています。『ビフォー・アフター』を読むと、短期間ながら生徒が学習への意欲を高めていくことに驚かされますし、何よりも私たちが触発されます」と山田先生は話す。
 より生徒に手をかける指導で、新たな一歩を踏み出しつつある川越高校。今後は、父性的な指導と母性的な指導の両面から生徒を支えていく学校づくりを目指すという。
 「母性は本校の強みである手厚い進路指導です。今後は面談にキャリアカウンセリングの手法を取り入れ、志望校選びの前段として、『どう生きていくのか』『なぜ大学か』という将来設計の視点を取り入れて指導していきたいと考えています。私たちも今まで以上に面談力を高めていく必要があるでしょう」
 父性の面では、スクールミッションである「感・知・動を磨く」の実践の中で、生徒のモラルバックボーンを培っていく。同校では、3月に卒業生と保護者が雑巾でトイレを磨く「心を磨く大掃除」を行っている。生徒と教師、保護者が共に凡事を徹底することで、生徒一人ひとりに「社会人」としての自覚を促すことがねらいだ。
 「本校は創立20年を過ぎ、人間でいえば青年期に入りました。青年期の子どもが『何のために生きるのか』『自分はどこから来てどこへ行くのか』という問いを抱くように、本校は『これからどこへ向かうのか』を全力で悩んでいる時期といえるでしょう。それは、古い自我を壊し、新しい自我を再構築する過程にほかなりません。今こそ『進路指導プロジェクト』ができ上がるまでの熱い思いを継承し、次代の川越高校の進むべき道を見いだしていきたいと思っています」(森本先生)


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