今後の課題の一つは、生徒への冊子の活用を促すことだ。ホームルームで活用方法を示したり、授業で使ったりして、生徒への浸透に努めているが、生徒が実際にはどの程度活用し、学習に生かしているかは把握していない。冊子に対する生徒の満足度を調べつつ、活用を促す手立てを講じていきたいとしている。
二つ目の課題は、入試問題研究を、教師個人の指導力向上だけでなく、組織的な指導改善に生かせる仕組みにしていくことだ。 「入試問題の出題意図をしっかり読み込み、教科内で指導方法を共有することも、入試問題研究の目的の一つです。しかし現状では、教師が個々の考えで指導し、組織的な対策にまでは踏み込めていません。入試問題研究を軸にして、大学ごとの指導方針について、教科内でいかに共有していくかが課題です」(橋本先生)
そのためには教師同士が議論できる土壌をつくり上げていくことが鍵になると、鳥飼先生は指摘する。
「現状では、作成した分析結果は校正時に教科内で回覧し、間違いがないかを確認する程度です。『VIEW21』の記事で、福島県立磐城高校が入試分析を通してベテラン教師が若手教師に指導しているという事例がありました(08年度4月号、欄外参照)。本校も理想としては、磐城高校のように入試問題研究をノウハウの伝達や教師同士の目線合わせのツールにしたいと考えています。取り組みの浸透度、教師の多忙感などのためにそこまで達していませんが、今後の目標です」
分析結果を組織的に確認する場を設けると、通り一遍の議論にしかならず、真の指導変革につながらないという懸念もある。それでも大森教頭は、教師同士の議論が指導力向上には必要だと考えている。
「入試実績は順調に推移していますが、学級によって進学実績が異なるなど、教師の力量にはまだばらつきがあります。実績を出している学級とそうでない学級の差は、担任と生徒の信頼関係にあると思います。授業改善や面談力の向上により、生徒とのきずなをより強くすることが、今後も本校が躍進し続けられるかどうかを左右する重要な鍵になると思います」
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