渡辺先生と大日向先生のインタビューからは、育児のストレスや不安を抱え「我が子主義」に陥りやすい母親たちの姿や、学校にさまざまな要求を寄せる保護者の背景にある社会的・時代的要因が見えてきた。そこで、保護者と学校がつながり、子どもにとってよりよい環境をつくるための手立てを整理した。
小学校低学年の子どもを持つ母親に、子育てで実際に困ったときの状態などを尋ねたところ(図1)、「どうしていいかわからず途方にくれていた」が72.0%(「とてもそうだった」+「少しそうだった」の合計、以下同)、「不眠やうつ状態があった」も35.1%いる。また、困ったときに、79.0%が「夫に相談」、64.4%が「親などの身内に相談」、62.2%が「近所の人や知り合い、友だちに相談」している。しかし、「夫は頼りにならなかった」と答えた母親が43.6%、「いい相談相手がほしかったが、見つからなかった」と答えた母親も32.8%いる。母親が子育てに困ったとき、気軽に相談できる環境づくりは重要な課題だ。
保護者が抱えている悩みをきちんと受け止めることが、信頼関係をつくる上ではまず必要だ。 P.9から紹介する春日部市立幸松(こうまつ)小学校では、教師が子育ての先輩として相談に応じる「保護者相談日」や、親子で参加できるカルチャー講座「4じ5じスクール」を設け、保護者の悩みの解消や、保護者自身の「楽しみ」の場を積極的につくり出している。また、保護者の意見や要求には、担任だけでなく学校組織全体で対応することで、高ぶった保護者の気持ちを和らげる効果を上げている。
保護者の悩みだけでなく、要求や意見にも適切に対応するためには、その背景をしっかり把握しておきたい。 P.12から紹介する芦屋市立岩園小学校は、学校評価アンケートで保護者の声を丁寧に聞く仕組みづくりや、その声に対する誠実な対応が、保護者と学校の間の風通しをよくしている。また、保護者の教育に対する熱意を学校への心強いサポートと捉え、読み聞かせや掃除の時間に保護者に学校に入ってもらっている。
P.16から紹介する足立区立五反野小学校は、「学校支援カード」や「交通安全当番」などの取り組みを通して、すべての保護者が何らかの形で学校をサポートする。また、保護者による授業診断を年2回実施している。保護者に見える形で、スピーディーに授業改善に取り組む姿勢を見せることで、保護者の当事者意識を高めている。
これらの取り組みがある一方、学校だけでは対応の難しい保護者がいるのも事実だ。P.18からは、そうしたケースについて、自治体が整えている支援体制も紹介している。学校事例と併せて、参考にしてほしい。
特別資料
保護者会や学校だよりで活用できる
・子どもの携帯電話所持率、・親の行動と成績の相関 など