新学習指導要領へのアプローチ 第3回 「問題解決能力」を高める理科指導
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
 
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Q7:「科学的な見方や考え方を養う」とはどういうことでしょうか。

A7「科学的な見方や考え方」とは、対象に働きかけ、その結果を得るという意味で、「思考力」と言い換えてよいでしょう。
 「思考」とは、ある目標の下、これまでに持っている知識を基に対象に働きかけ、情報を得て、それらを既有の体系と意味付けたり、関係付けたりすることで、新しい意味の体系、すなわち科学的な見方や考え方をつくり出していくことだと考えられます。
 思考の芽生えは、複数の事象の比較から違いに気づくことです。例えば、三日月を見ただけでは何も思わないかもしれませんが、満月と比べることで、「形が違うのはなぜだろう」などの疑問がわいてきます。そこから過去に学んだ内容と関係付けたり、仮説を立てて観察・実験をしたりして、思考を深めていくのです。
 各学年の学習指導要領の「目標」には、「比較(する)」(3年生)、「関係付け(る)」(4年生)、「計画的に追究する」(5年生)、「推論(する)」(6年生)というキーワードが出てきます。これらは思考のステップであり、学年を追って思考力が高められるように設定されています。

Q8:「問題解決の能力」とはどのような力でしょうか。

A8「問題解決の能力」とは、思考力や判断力、表現力などの総合力にほかなりません。自ら問題を発見し、思考をめぐらせて解決し、それを論理的に説明するなど、幅広い能力を意味します。自分の考えを実証的に検証する科学では、まさに「問題解決能力」が根幹の力といえるでしょう。もちろん、実験したり説明したりするには、知識や技能が必要です。問題解決能力の土台は「基礎的・基本的な知識や技能」なのです。

Q9:「問題解決能力」を育てるのに効果的な指導法を教えてください。

A9「問題解決能力」を身に付ける過程で、教師が適切な「手立て」を講じることです。問題解決の能力を構成する、思考力や表現力等の育成には、子どもが主体的に自然事象にかかわる問題解決活動を行うことが必要です。それは、(1)子どもが問題を見いだし、(2)その問題となる事象を説明するための仮説を発想し、発想した仮説の真偽を確かめるための実験方法を立案・実行し、(3)実験結果を考察する、という3場面に整理できます。
 子どもには最初から十分な思考力があるわけではありません。「考えなさい」という発問は、子どもの自主性を大切にしているように見えて、実のところ子どもを困惑させます。「この2つを比べてごらん」「前に学んだ内容と似ていないかな」などと、それぞれの場面ごとに考えるための視点を与えることが大切です(図)
 表現力についても同様です。「自由に書いてごらん」では、子どもは何をどのように書けばよいのかわかりません。まずは書き方のモデルを与え、真似を繰り返すことにより、思考の型ができ上がり、同時に表現力が磨かれていくのです。口頭での発表の仕方などについても、同様の指導を心がけてください。

関連
・考えるための視点を与える教師の手立てについて:P.4の図
・書き方のモデルについて:P.5「事例1・高見小学校」

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