Q8:「活用」の指導で陥りやすい失敗を教えてください
A8:(1)習得で終わる、(2)子どもが実は考えていない、(3)全員が思考しているとは限らない、というケースがあります
それぞれもう少し詳しく説明します。
一つめは、習得で終わってしまい、「活用」に発展しない授業です。例えば、平行四辺形の面積を求める公式を覚えさせ、ドリルの問題を解かせるだけなら「習得」です。これでは単なる暗記にとどまり、なぜ長方形と同じく「辺×辺」ではいけないのかという本質は理解できません。この状態であれば、少し複雑な文章題で平行四辺形の面積を問われ、二つの辺と高さが与えられている場合、「辺×辺」で計算する子どももいるでしょう。「活用力」を伸ばす指導では、さまざまな高さの平行四辺形を見せて長方形との違いを視覚的に学ばせるなど、十分に思考させる必要があります。
二つめは、子どもが考えているようで、実際は考えていない場合です。教師が「考えなさい」と指示し、子どもが「うーん」とうなっているからといって、必ずしも考えているとは限りません。何もない状態で「考えろ」と言われたら、大人でも困ってしまいます。考えるヒントや方向性を与えられて初めて、子どもの思考は動き始めます。それが繰り返し述べている、「思考の焦点化」です。
三つめは、1人の子どもが答えを出したら、次に進んでしまうケースです。子どもによって思考の深さや速さが異なるのはいうまでもありません。だれかが答えに到達した時点で考えるのをやめさせたら、大部分の子どもは思考が不十分なままで終わってしまいます。「活用」の指導で重要なのは、答えよりも、そこに至るまでの思考です。皆が思考の過程を説明できるようになるまで、時間をかけて考えさせましょう。
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