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滋賀県立 米原高等学校

研究テーマ1:Round制を導入した英語 Iの授業
研究テーマ2:4技能を総合的に伸ばす授業形態としてのディベートの指導
■研究テーマ2
4技能を総合的に伸ばす授業形態としてのディベートの指導
■そのテーマを研究しようと考えた背景
ディベートは4つの技能全てを伸ばすために大変有効な指導法であると考え、本校では1年生では学校設定科目の「実践コミュニケーション」(1単位)、2年生ではOCII(1単位)、3年生ではOCC(2単位)で重点的に取り組むことにした。
■当初期待していた成果
特定のテーマに基づいて英語で情報を収集し、それに関する自分の意見を構築し、英語で意見発表を行うことを通じて、英語における情報収集力、表現力、発表の能力を総合的に高める。
■対象クラス、生徒人数
高1普通科英語コース 40名、高2普通科英語コース 40名、高3普通科英語コース 40名
■指導教員、教員人数
日本人英語教諭2名、ALT2名
(1クラスを2分割し、JTL1名、ALT1名によるTT)
■その他
 
■指導計画
ディベートのシラバス

1年次(入門期) 1) ディベートの意義や方法を理解させる。
・言語操作能力の大切さ
・相手の意見を聞くことの大切さ
・多角的な思考力の大切さ
・論理的思考の大切さ
・情報処理能力の大切さ
・調査能力の大切さ
2) 日本語によるディベートの導入
・テーマは、少し調査を要するが、生徒が関心を持てるもの
例)「見合い結婚と恋愛結婚」「留学をするなら高校時代か大学時代か」
・肯定側・否定側に分けて、立論する理由を考えさせる。
・相手側の立論に対する反駁の訓練(反駁シートで正しい観点かどうかを書かせる)
・グループでディベート
・グループディベートの全体発表
・クラス全体を肯定側と否定側に分けて全体ディベート
3) ディベートに必要な英語表現の定着
・立論や反駁に必要な表現を教える。
例)We're going to argue that love marriage is better than arranged marriage.
  The first reason is that.... / We see your point, but..
・定型表現を使って、簡単なディベート
テーマは生徒の考えの範囲でできる簡単なもの
例)「週休2日は週休1日よりよい」「ペットとして、犬は猫よりよい」
・テーマを論じるのに必要な語句は生徒自身に調べさせる。
・時間をかけて指導する。
1年次(前半) 英語によるディベートの基礎作り(1)
・学校生活・家庭生活に関わるテーマで肯定側・否定側にわけて、その理由を英語で書かせる訓練
「学校には給食があるほうがよい」「共学のほうがよい」「制服があった方がよい」
「一人っ子のほうが兄弟があるよりよい」「親は共稼ぎの方がよい」
・ペアで互いに理由を読みあって伝える練習(反論は十分にできなくてもよい)
1年次(後半) 英語によるディベートの基礎作り(2)
・(1)の書かせる訓練を続け、ペアの相手に意見を伝えるときに、できるだけ書いたものから目を上げて言う練習
・相手の意見を聞いて、その反論を書く練習
・書いた反論についても、できるだけ書いたものから目を上げて言う練習
・グループディベート、クラス全体のディベートを行う。その際にも、ペアでの練習の時に書いたものを、できるだけ書いたものから目を上げて言う。
2年次(前半) 即興で意見を述べられる準備の訓練(1)
・テーマはあまり難しくせず、書いたものを見ないで意見を述べる練習
例)「映画を見るのは映画館の方がビデオよりよい」「通勤には電車の方が車よりよい」「忙しくても給料の高い仕事の方が、暇でも給料の安い仕事よりよい」
・反論をできるだけ即興で言う練習
2年次(後半) 即興で意見を述べられる準備の訓練(2)
・テーマを少し難しくして、キーワードのみを書いておいて、それを見ながら意見を言う練習
例)「都会の生活の方が田舎の生活よりよい」「学校年度は9月に始める方が4月に始めるよりよい」「障害を持った子は障害児学校に行く方が普通校に行くよりよい」「学校の授業はすべて選択制にする方がよい」
・相手の言うことをメモして、反論を即興で言う練習
・グループディベート、クラス全体のディベートを行う。その際にも、キーワードやメモを見ながら意見や反論を言わせる。
3年次(前半) 社会的・国際的なテーマについて実際のディベートの訓練(1)
・テーマを社会的・国際的なものにして、事前に調査をさせて、それをもとに意見を書くことから始める。
例)「死刑制度はあるほうがよい」「陪審員制度があるほうがよい」「環境ルールは途上国が作るべきだ」「英語は選択科目にすべきだ」「大学入試センター試験にリスニングを導入すべきだ」「核兵器は廃止すべきでない」
・書いたものを見ないで、ペアやグループでディベートをする。
・全体でのディベートは全く何も見ないで行う。
3年次(後半) 社会的・国際的なテーマについて実際のディベートの訓練(2)
・事前に調査をさせて、それをもとにキーワードや重要な情報のみのメモを作って、自分の言うべきことを考えさせる(全文を書かせない)。
例)「外国人はある程度権利を奪われても仕方ない」「英語を第二公用語とすべきだ」「英語教育は小学校から導入すべきだ」「大学入試を廃してすべて内申書で合否を決めるべきだ」「代理母の制度を認めるべきだ」「脳死は人の死と認めるべきだ」
・メモだけで、ペアやグループでディベートをする。
・全体でのディベートをメモだけを頼りに行う。

 このように段階を経て、まずは書くことから始め辛抱強く指導する。その際、書いた英語はできる限り 正しく直してやり、ディベート後も定期テストやスピーキングテストで再度、書かせたり言わせたりする。
 テーマ的になるべく似たものを続けることによって、使用できる語彙が継続するので定着はよくなる。
 ディベート指導において大切なことは、早急に結果を求めないということ、形式にこだわるのではなく、英語による総合力を伸ばすという目的を常に持って、テーマにふさわしい言語表現や語彙を定着させることを主眼に行うことである。
■一連の指導の流れ
添付資料1 一連の指導の流れ
添付資料2 ディベート教材集
添付資料3 ディベートのテスト
■成果
1年生
・生徒がそれぞれのトピックについて、自分の意見を持つことができた。
・物事には様々な観点があるということを、色々な意見を提示することで知らせることができた。
・学んだ英語を使い、自分の意見を表現する力を伸ばせた。
・毎回必ず課題として意見を書かせていたので、まとまりのある英文を書く力がついた。 
・生徒同士が英語で会話することが自然に定着した。
・即興で反駁する中で、自分の言いたいことがうまく言えないストレスが、もっと英語を習得したい、という意欲の原動力となり、多くの生徒が授業の後で授業者に質問をしにくるようになった。

2年生
・初めは、自分の意見にかかわらず、肯定側または否定側に立って反駁練習をすることに抵抗があったようだが、次第にタスクとして捉えられるようになってきた。
・定番表現を教材化し、音読練習などをすることで、定番表現と反駁練習がリンクできるようになってきた。

3年生
・時事英語、長文に対する慣れができた。
・常にディベートすることを目標に英文を読んだり、授業者の英語による解説を聞いたり、自分の意見を書いたりしたので、表現の定着率が良かった。未知の語彙を5~10与えても、自分の意見を述べるためにそれらを頻繁に使おうとする。また、授業者が解説に使った表現を自分の意見を述べる際に使用するなど、効率のよい学習ができた。
・エッセイ・ライティングを各トピックごとにさせるので、自分の意見を論理的に述べる訓練ができた。
・社会問題に常に触れることで、ニュースや新聞に関心を寄せ、毎日触れるようになった。また、物事の多面性を知り、視野を広げる一助となった。
・反駁する際に、瞬時に自分の意見をまとめて述べなければならないので、英語に訳せない日本語を、知っている言葉でparaphraseするようになった。
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