移行措置対応のポイント 第2回 「活用」から見る算数の授業

VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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提案〈理論編〉

「活用」の視点から授業を見直すことで
算数本来の授業に立ち返る

山梨大教育人間科学部 中村享史(たかし)教授
横浜市教育委員会事務局 齊藤一弥(かずや)首席指導主事

算数の授業ではなぜ「活用」が大切なのか。
算数で求められる「活用」について、算数の指導に詳しい二人の識者に
「活用」を取り入れた授業例を示しながら、解説していただいた。
ポイント
算数における「活用」とは? →P4
◎算数科の目標の一部の、筋道を立てて考え、表現する能力の育成のためには、おのずと「活用」を取り入れた授業が求められる。今の指導方法や教科書の利用の仕方を少し工夫するだけで、このような授業は可能となる
「習得」が十分でなければ「活用」は出来ない? →P7
◎「活用」は基礎・基本の「習得」がなければ出来ないものではない。活用の過程でより確かな習得が図れるなど、両者は連携している
「活用」を取り入れる効果と授業づくりの観点は? →P9
◎「活用」自体を目的にせず、「どのような子どもを育てるか」という観点から授業を組み立てることが必要。このような授業により、主体的に学ぶ子どもが育つだけでなく、結果的に授業時間の短縮にもつながる

算数における「活用」とは?

―― 算数では、「活用」をどのようにとらえればよいでしょうか。
中村 算数は、既習事項を使いこなす、すなわち「活用」しながら課題解決をすることで、新しい見方や考え方を獲得していく教科です。知識・技能の習得も重要ですが、それだけが目的ではありません。課題解決に必要な、思考力や判断力、表現力などの育成に欠かせないのが、活用を取り入れた授業です。
齊藤 新学習指導要領では、知識・技能の確実な習得と共に、それを活用して課題解決をすることによる、思考・判断・表現力、更には主体的に学んでいく力の育成が重要視されています。これまでは知識・技能を習得させることが中心で、教師の質問に対して子どもが機械的に答えるという算数の授業が、少なからず見受けられました。しかし、それでは、中村先生が話されたような力、すなわち算数で本来身に付けるべき力は育ちません。国がその状況を省みて、「活用という視点を大切にして、算数に本来期待されている授業に立ち返りましょう」というメッセージを送っているのが現状です。つまり、活用を重視することは新しい取り組みではなく、もともと算数に必要とされていた指導といえます。
写真
●右 なかむら・たかし◎東京学芸大大学院教育学研究科数学教育専攻修了、東京学芸大附属世田谷小学校教諭を経て現職。『小学校学習指導要領解説算数編』作成協力者。日本数学教育学会(常任理事)、日本科学教育学会などの会員。全国の学校現場を回り、授業指導も行う。主著に『数学的な思考力・表現力を伸ばす算数授業』(明治図書)など。

●左 さいとう・かずや◎横浜国立大教育学部卒業。横浜市立小学校教諭を経て横浜市教育委員会事務局へ。『横浜版学習指導要領』策定、横浜型小中一貫教育推進、授業改善支援センター企画・運営を担当する一方、これまでに指導した授業は1400を超える。編著書に、『これ1冊でわかる活用型学力のすべて』(共著、ぎょうせい)。

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