次にシラバスの活用スタイルについて重要なポイントを探っていこう。活用スタイルについては、多くの学校に共通する特徴が2点見られた。
(1)シラバスの機能を広げる様々な発信媒体や場との連携が図られている
(2)内容を短いスパンで軌道修正できるスタイルになっている
(1)は、他のシラバスや媒体、場などでシラバスの内容を補完したり、目線合わせをすることなどにより効果的なシラバス活用を行っているということである。例えば、進路シラバスの内容は、進路指導について各時期にやるべきことを簡潔にリスト化することにとどめ、指導の詳細な内容は別の冊子で補完している事例(富士高校)や、保護者用シラバスの内容を学級通信の内容とリンクさせる事例(宮崎南高校)、保護者に向けた学校便りに、その都度「保護者用シラバスにあるように~」と、保護者用シラバスとの連関を意識させる例(長崎東高校)などがある。他の媒体やツールとリンクさせることで必然的にシラバス自体の内容がシンプルになり、伝えたい内容をストレートに伝えることができる上にシラバスの活用度が向上するのだ。
シラバスについて、「事前に時間をかけて『立派なもの』ができた割には使えない」という課題を感じる教師も多い。しかし、シラバスに求める内容をある程度絞り込み、他の媒体などに補完機能を持たせることで、こうした問題点は解決できるのではないだろうか。
(2)は、固定的なものに作り込みすぎるのではなく、短いスパンで生徒の実情などに応じた軌道修正が可能なものにしていることである。例えば、年度計画をその都度見直せるように教師用進路シラバスを月刊化している事例(泉松陵高校)や教科シラバスをバインダーで綴じる形にして、生徒の指導状況に応じて内容を修正できるようにした事例もあった(大宮高校)。年度頭に年間の計画をしっかりと確立しておくことは当然重要であるが、それをその都度見直し、実情に合わなくなった場合に軌道修正できるスタイルにしておくことは、より重要だと言える。
多くの学校で聞かれる課題認識としては「シラバス作成に時間をかけるより、生徒と直接向き合う時間を確保すべき」「年度当初から詳細に作り込みすぎると、計画立案だけで満足してしまい、肝心の活用がおざなりになってしまう」という2点が多いようだ。
これらの課題解決の一つとして、他媒体との相互補完機能を持つことや、軌道修正可能な活用スタイルを取ることは有効だと考えられる。
ただし(1)(2)の前提としては、教員間で共通理解の取れた3か年の指導の流れが確立していること、また時期ごとに補完する媒体(学校のしおり、学年通信、クラス通信など)や場がしっかりと機能していることが必要である。
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