耳塚 今回の学習基本調査で最も気になったのは、家庭学習時間の二極化です。偏差値55以上の学校の生徒の学習時間が増加に転じた一方、偏差値50以上55未満の学校の生徒の学習時間は大きく減りました。現場の先生方の実感はいかがでしょうか。
赤藤 姫路飾西(しきさい)高校は偏差値50以上55未満の学校ですが、1年生の平均学習時間は約1時間で、学習基本調査の結果通りの数値です。2年生になっても、その時間に変化はありません。今ある力を維持すれば、ある程度の大学に入れると思っているためか、頑張って勉強しようという意欲を持ちにくくなっているようです。
飯島 南多摩高校では3年前、2年生の7月模試で、成績が急激に下がることに気づきました。「スタディーサポート」で生徒の学習実態を調べたところ、平日に自宅学習を全くしない生徒が6割以上もいることがわかり、愕然としました。塾依存の傾向が強くなっていることもあって、教師から与えられた学習しかできない生徒が増えていると思います。
渡辺 確かに、受け身の生徒は増えています。加治木高校は、全国平均に比べて高校で塾に通う生徒は少ないですが、それでも定期考査前には課題を求めてくるなど、指示待ちの生徒が多くいます。学習時間が減るということはまだありませんが、学習をする生徒、しない生徒の二極化は進んでいると思います。
赤藤 特に予習をしない生徒が増えているのが特徴です。定期考査前に行う質問会でも、ある程度勉強してわからない部分を聞くのではなく、全く真っ白の状態で来るので驚きます。中学時代に塾中心の学習をしてきた生徒にとって、自分で課題を見つけて学習するということは困難になってきていると感じます。
飯島 中学校や塾で手厚い指導を受けてきているので、何でも教師が与えてくれると思っているのでしょう。試験前になるとすぐに「今度のテストには何が出るか」ということを聞きたがります。効率のよい学習を求める生徒の気質が、予習に向かわせないのかもしれません。
耳塚 今回の調査では、全国平均として授業の理解度が向上しているというデータも出ていますが、現場の実感はいかがでしょうか。
飯島 5年前の生徒と比べて理解が深まっているとは思えない、というのが率直な感想です。むしろ、授業を理解していない生徒が増えたという印象の方が強い。しかし、生徒が「わかっている」と思っているということは、低いレベルでの理解で満足しているのではないでしょうか。
渡辺 そうですね。授業中の生徒を見ていると、うなずいたり、理解しているような表情をしたりします。しかし、授業がわかることと知識として定着していることとは別物だと思います。本校では、数学の定着度を高めるために単元ごとに復習を兼ねたテストをしますが、出来は教師が期待するレベルに達していません。
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