既に9割以上の公立小学校で実施されている英語活動。しかし、ベネッセ教育研究開発センターが実施した「第1回小学校英語に関する基本調査(教員調査)」からは、導入に向けての多くの課題が明らかになった。こうした課題を乗り越え、実りある小学校英語活動を実践するためのポイントを紹介する。
教師が「不十分」と感じる課題には、教員研修やカリキュラム、予算など、行政が主体となって整備すべき事項が多い(図1)。学校が安心して英語活動に取り組むために、教育委員会は、地域の実情や教師の要望を踏まえた施策を立てることが重要だ。 2006年度に始まった足立区の教員研修(P.10~11)は、区内の小学校での英語活動実施率が全国平均よりも低い7割という実情から、まずは教師の不安を解消し、英語活動の意義や楽しさを知ってもらうことを第一の目的とした。また、こうした明確な狙いに沿って、外部講師を効果的に活用している。 P.12から紹介する京都市では、独自カリキュラムとそれを具体化した教材をつくり、どの学校でも一定レベル以上の英語活動ができるようにしている。教材も併せて提供したことが、市のカリキュラムが学校現場に広く受け入れられるきっかけとなった。
全校で英語活動をスムーズに進めるためには、教師全員で目的を共有し、協力し合える校内体制はもちろん、それを全面的にあと押しする管理職の姿勢が欠かせない。また、保護者や地域の協力を得ることも、教師にとって大きなサポートとなる。 P.15から紹介する京都市立西陣中央小学校は、校内に「英語活動部」を設置。英語活動主任が学級担任とALT(注1)のパイプ役になり、学級ごとの活動内容のバラツキを解消した。 P.17から紹介する所沢市立南小学校は、学校独自にAET(注1)の人材を探したり、保護者ボランティアを導入したりするなど、外部人材の積極的な活用で充実した英語活動を展開している。
今後、小学校での英語活動が広がれば、学級担任が指導する必要性がより増えるだろう。子どもをよく知る担任が指導の中心となるメリットは大きいが、多くの教師が英語の指導に自信が持てずにいる。 P.19から紹介する浜松市立北浜小学校では、英語活動を20分単位にして負担を軽くしたり、活動内容を教科と関連付けて学級担任の持ち味を生かしたりしている。また、教師が身振り手振りだけで英語活動を行うノンバーバルの手法を取り入れ、学級担任の英語に対する不安を払拭(ふっしょく)している。 発音に自信がなく、ネイティブの人材も十分でない場合は、音声教材を上手に利用したい。P.22から紹介する大牟田市立明治小学校では、市が整備した小学校英語向けウェブサイトを全学級で活用。発音やスキットはウェブ教材で練習し、そのあと、担任主導で活動を行う。こうしたIT教材なら、発音や英語表現を気軽に練習でき、教師自身の英語力向上にも役立てることができるだろう。