「文章表現で性差を意識するのか?」 「海に優しい日焼け止めとは?」
調査や実験で疑問を明らかにする生徒たち

全国の中高生が多様な社会問題や身近な疑問に関わる探究・研究の成果を発表し、意見交換をして、多様な人と学び合う「ベネッセSTEAMフェスタ2023」が、2023年3月18・25日の2日間にわたり、オンラインで開催されました。参加150チームの中から注目の発表をした2チームを紹介します。

物語文などの表現が子どものジェンダー意識に及ぼす影響を考える

アカデミック部門
発表テーマ 「会話文中の文末表現や一人称によってキャラクターに割り当てられるジェンダー —小学校国語教科書の物語文から見る児童が抱くジェンダー・イメージ—」
発表者 奈良県 奈良女子大学附属中等教育学校 チーム藤木

奈良⼥⼦⼤学附属中等教育学校の「チーム藤⽊」は、物語文などの文末表現や一人称に性差があることに着目し、メディアの影響が⽐較的少ない⼩学⽣は、そうした表現をどう捉えているかをアンケートによって調査しました。

動物のキャラクターの会話から性別を判断して理由を説明する質問紙調査などを実施した結果、子どもは文末表現や一人称に基づいてキャラクターの性別を判断していることが分かりました。

会話文中の文末表現と一人称が、キャラクターの性別を判断する最も重要な要素となることが分かりました。

さらに、その理由を分析すると、話し方が「頼もしい」と感じる場合は「男の子らしい」、「やさしい」と感じる場合は「女の子らしい」と認識し、そのイメージがキャラクターの外見の印象を左右していました。例えば、動物のキャラクターの外見には性差がないにもかかわらず、キャラクターの台詞を「頼もしいしゃべり⽅」と感じた場合、「男の子」と認識し、外⾒を「かっこいい」と評価する傾向がありました。

「かっこいい」「たのもしい」「男性的」は、相互に作用してキャラクターのイメージに影響を及ぼしていることが分かりました。

それらの結果に基づき、文末表現や一人称がどのような影響を持つのかを子ども自身が理解することで、子どもの自己表現の幅を広げたり、他者理解を深めたりする手助けになる可能性があると考察しました。

社会人サポーターである東京都立大学の福田公子准教授は、「小学1年生で既に文末表現などからジェンダーを読み取っていたり、外見の判断にまで影響していたりするという結論がとても面白かったです。研究の目的や背景が分かりやすく、最後の主張の根拠も明瞭で、超高校級の発表だと感じました」と評価するとともに、さらに研究を高めるための様々なアドバイスをしました。

環境負荷に配慮した日焼け止めを開発

ソーシャルイノベーション部門
発表テーマ 「海にも人にも優しい日焼け止め」
発表者 東京都 郁文館高等学校 緑川チーム

郁文館高等学校の「緑川チーム」は、「環境に優しい化粧品」を出発点として探究を進める中で、日焼け止めに含まれる紫外線吸収剤がサンゴ礁に悪影響を与えている問題に関心を持ちました。そして、紫外線吸収剤の代わりになる物質を調べるうちに、天然成分の紫外線散乱剤を使用して日焼け止めを作ることができると知り、製品の開発に取り組みました。
初めに、2つの試作品を製作(スライド3)。

スライド3 初めに、紫外線散乱剤を用いた試作品を2つ製作しました。

UVビーズとUVライトを用いた実験により、紫外線吸収剤を使用した市販品などと比較しながら、日焼け止めの効果や肌なじみを測定しました。その結果、肌なじみについて改善できそうな点が見つかり、一部の材料の量を調整して3つめの試作品を製作。性能の測定では、市販品と比べて、日焼け止め効果は平均的でしたが、肌なじみは大きく改善しました(スライド4)。

スライド4 3つめの試作品(試作品3)は、市販品と比べて、日焼け止めの効果は平均的、肌なじみは良好という評価が得られました。

校内で生徒15人にテストをしてもらうと、半数以上が「また使いたい」と回答しました。

今後は、試作品の安全性を確認するとともに、環境に配慮したパッケージも製作し、まず校内で試験販売を行いたいと語りました。

社会人サポーターの東京工業大学の辻本将晴教授は、「紫外線吸収剤のサンゴ礁への影響という視点が素晴らしく、実験をして性能を向上させる研究開発をしっかり行っている点にも驚きました。今後、製品化や販売を進める上では安全性に関わる制度などもよく調べて、イノベーションを起こせるように挑戦してください」と、激励しました。

第4回は、大妻中野中学校・高等学校のバイエルン「しかくの外側を想像できるか」、郁文館グローバル高等学校のProject SPACEBIRD「有翼モデルロケットの研究開発及び飛行特性」を紹介するとともに、社会人サポーター代表の東京工業大学・赤堀侃司名誉教授と、主催者代表のベネッセ教育総合研究所教育イノベーションセンター・小村俊平センター長のメッセージを伝えます。

ベネッセSTEAMフェスタ事務局

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