「進研ゼミ中学講座」の中高一貫生コースには、「ゼミのみんなで作ろうPJ(略して「ゼミつく」)」という、会員専用のオンラインPBLサイトがあります。そこに集まった会員たちは、日々「ICT活用力が低い人が楽しく力をつけるためのタイピングゲーム制作」「中学生の気持ちを伝えるために合作漫画を作成」など、様々なオンラインPBLプロジェクトを自ら提案。参加希望者を募り、掲示板上のやりとりを通して企画を練り上げ、実行しています。
この特集では、学年や学校の枠を超えてネット上で協力し合う体験ができる「ゼミつく」の1コーナー「みんなでサーベイ」から、今ドキの中学生の感覚や意識がわかるオンライン調査の結果を共有するとともに、このようなオンラインコミュニティで、中学生たちがどのような学びを得ているのかをご紹介します。
「体力テスト」について調べたい! どんな設問が必要?
行事・イベントが目白押しで、先生も生徒も大忙しの春。「体力テスト」もその一つです。
「この時期になると体力テストを行う学校が多いと思う。年に一度しか行わない体力テストで一番人気のある種目は何か、みんなはどれくらいの判定をもらっているのか知りたいです」と掲示板で提案してくれたのは、ニックネーム「コミュ力おばけ」さん(中3)。
どちらもオンライン調査で調べることは簡単です。でも、単に人気種目や成績を調べるだけではつまりません。かけ合わせることで何らかの傾向を見出せそうな設問はないか、みんなで仮説を考えることになりました。
話し合いの中で、ニックネーム「関数と音楽の٩( ᐛ )وじゃがまる」さん(中2)が、「体力テストの成績と、『運動部か文化部か』『週にどれだけ運動するか』『睡眠時間』の相関を調べたらどうか」と提案してくれたので、それらの設問も盛り込むことになりました。
「体力テスト」で一番好きな種目は? その理由は?
オンライン投票の結果、「ゼミつく」参加者が体力テストで一番好きな種目は「長座体前屈」、二番目に好きな種目は「握力」ということがわかりました。そこに、「その種目が好きな理由を教えてください」という問いの答えをかけ合わせると、「長座体前屈」を好きな理由は「得意・良い点数が取れるから」が一番多く、一方「握力」を好きな理由は「簡単・楽にやれるから」が一番多いことがわかりました。
確かに、「握力」のテストは右左交互に2回ずつ力を入れるだけで終わります。持久走やシャトルランのように苦しくなるまで続ける必要はなく、とても楽に終わる競技です。「長座体前屈」が「簡単・楽にやれるから」と答えた生徒が「握力」に次いで多い結果になったのも、座って2回前かがみになるだけで終了する競技だからだと思われます。
割合で見ると、「得意・良い点数が取れるから」と答えた人が最も多かった競技は「反復横跳び」だったことを、ニックネーム「スイカズラ」さん(中2)が見出してくれました。別の視点では、男女別に好きな種目を見ると興味深いとニックネーム「Lunaさん」(中2)が指摘してくれました。
そもそも今回の調査に参加した人のうち、男女の性別を明らかにした人だけを数えると、男性:女性の比率は約4:6でした。それを念頭に置きつつデータを見ると、「シャトルラン」を一番好きだと答えた人は男性が75%、女性が25%だったので、特に男性に人気で、女子からは不人気の種目であると言えそうです。また、部活という観点から見ると、その種目を一番好きだと答えた人のうち最も運動部員率が高かったのは「シャトルラン(運動部員率88%)」、最も文化部率が高かったのは「上体起こし(文化部員率100%)」でした。
この調査は中高一貫講座受講生の中でも一部の会員しか参加していないためサンプル数が少なく、結果に偏りが生じている可能性があるということを念頭に置きつつも、いろいろな角度からデータを分析して自分の発見を教え合うことで、種目の人気投票からも様々な発見を得られることを体験することができました。
「一番嫌いな種目」で票が集まったのは…「シャトルラン」
いくつかの種目で票が割れた「一番好きな種目」に対し、「一番嫌いな種目」は、「シャトルラン」に票が集中しました。音について行けなくなる限界までがんばらなければならない競技なので、辛いと感じる人が多かったのでしょうか。
2位となったのは「ハンドボール投げ」でした。「ハンドボール投げ」は「シャトルラン」のように頑張り続ける必要はありませんが、「苦手・低い点数しか取れないから」と、苦手意識を強く持つ人が多いということがわかりました。
「体力テスト」の結果を活用しようと考えたのは、どんな人?
今回、「『体力テスト』の結果を参考にして、生活態度を改めようと考えたことはありますか?」という問いも入れていました。結果は、「あまりない」が34 %、「全然ない」が28 %で、結果で生活態度を改めない人が多いということがわかりました。
この結果を学年別に見ると、学年が低い人ほど「全然ない」「あまりない」に集中し、学年が上がると「すこしある」「おおいにある」が増えていく傾向が見られます。年齢が上がれば上がるほど、健康に対しての意識が高まるのかもしれません。
(「ゼミつく」は進研ゼミ中学講座中高一貫スタイルを卒業してからもアクセスできるので、参加者には高校生が含まれます。また、学年を先取りして受講している小学生も参加しています。)
次に「『体力テスト』の結果を参考にして、生活態度を改めようと考えたことはありますか?」という問いと「体育の授業や部活動以外に、自主的に体を動かすことはありますか?」。という問いをかけ合わせてみました。すると、自主的に体を動かしている人ほど、体力テストの結果で生活態度を改めようと考えることがわかりました。
既に運動習慣を作っている人ほど「体力テスト」の結果をさらに活用しようとし、運動習慣がない人ほど「体力テスト」の結果を無視する傾向があると言えるかもしれません。
掲示板での討論から
アンケート回答後に感想戦を繰り広げることができる掲示板では、結果の読み取り方に関する議論の他に、ニックネーム「ふふ」さん(中2)が投稿した「シャトルラン・・・、電子音・・・、ドレミファソラシド・・・、ウッ頭が・・・。」という投稿から、「シャトルラン」に対する投稿が盛り上がりました。
「やけに焦りますよねあの音、、、トラウマ」(ニックネーム「すらいむ」さん・中3)、「あのアナウンスやめて欲しい」(ニックネーム「孤高の剣士™️」さん・中3)など、音声に対する印象があまり良くない人が複数いました。
ニックネーム「にゃありぃ」さん(中3)は、「シャトルラン」の実施方法に不満を持ったことがあるそうです。小学校の時のテストで、ペアの人のせいで自分の記録が止まってしまった体験を紹介してくれました。ニックネーム「すらいむ」さん(中3)からも「え、なんかめっちゃそれななんですけど!全然ペアの人の声が聞こえないし」という指摘があり、ペアになった人の対応いかんで遺恨を残す結果になる可能性があることが伺えます。
成績を上げるテクニックの教え合いも、掲示板ならではの話題です。
シャトルランの成績を上げるテクニックとしては、「卓球部に入ったことで体が鍛えられて、反復横飛びの回数が倍ぐらいになった!」(ニックネーム「Ms.ハリネズミ🦔」さん・中2)という正統派攻略法や、「シャトルランなら「ドー」から次の「ド」まで一瞬休憩できるし、最初の方でスピード掴めば意外といけました」(ニックネーム「りんご飴 (PC)」さん・中3)という、その場でもやれそうなコツが紹介されました。
「みんなの中では何が人気なのかを確認したい」「みんながどう思っているのかを知りたい」。
アンケートを提案する会員が最初に思いつくのは、ごく単純な動機からです。「ゼミつく」では、そのような提案に対してみんなで知恵を出し合い、仮説を立て、この調査で何を検証するのかを深めてから調査を実行します。
その結果、仮説が正しかった・正しくなかったかの検証も重要ですが、予想していた仮説が検証できるような設問設計ができていたか振り返るのも重要であると考えています。
聞きたいことをきちんと調べられる調査の設計は難しいものですが、「ゼミつく」で楽しく気軽にそれらを体験し、学校での探究活動などに活かして行って欲しいと考えています。
<調査概要>
『「体力・運動能力調査(体力テスト)」の得意種目・苦手種目』
調査の目的:この時期になると体力テストを行う学校が多いと思う。年に一度しか行わない体力テストで一番人気のある種目は何か、みんなはどれくらいの判定をもらっているのか気になったから。(コミュ力おばけさん)
調査方法:進研ゼミ中学講座中高一貫スタイル内「ゼミつく」でのインターネット調査
調査期間:2023/05/17 19:00 〜 2023/05/26 23:59
回答者数:83人
「ゼミつく」運営 永田衣代