昨年度、VIEW Next Onlineで「楽しい学びあい」(【連載】楽しい学びあい(全20回)) という隔週連載を持たせてもらった、合同会社楽しい学校コンサルタントSecondの前田です。
中学校や高校などで13年間教壇に立ち、楽しく子どもたちと学びあってきましたが、どの学校にも先生たちをサポートする専門職が必要だと思い2019年に起業し、5年間で、北陸を中心に、70校を超える学校(幼稚園・小学校・中学校・高校・特別支援)のサポートをしております。
(詳しくはコチラ⇒Second HP)
今年度は、「from various viewpoints」というテーマで連載します。
タイトル通り、皆さんと教育界の事象を“様々な視点から見て”、楽しく学びあえたらと思っております。
僕の連載は「問い三昧」です。
早速、皆さんに質問です!
皆さんには、自宅や職場以外に「自分の居場所」という場所はありますか?
「自宅と職場以外に“自分の居場所”なんてほとんど無いよ」という方も少なくないのではないでしょうか。
最近、“自分の居場所”に関する調査データが、『Forbes Japan』で取り上げられていました。博報堂DYホールディングス傘下のソーシャルビジネススタジオ、SIGNINGが2022年11月に行った調査によると、居場所が「自宅のみ」だと答えた層と、「自宅+自宅以外」にあると答えた層、「自宅以外のみ」だと答えた層に分けて幸福度を調べてみると、自分の居場所が「自宅+自宅以外」にあると答えた層で幸福度の平均点が最も高かったそうです。
また、内閣府の「子ども・若者の状況及び子ども・若者育成支援施策の実施状況」によると、“自分の居場所”の数が多いほど「自己肯定感」や「チャレンジ精神」「充実感」などを感じる子どもたち・若者たちの比率が増えるそうです。
これらの事から、“自分の居場所の数”と「幸福」「充実感」には関係があるようです。
皆さんは自宅や職場以外にどんな居場所があると、より「幸福」や「充実感」を感じることができるのでしょうか?
“自分の居場所”にどんな要素や意味・価値を求めますか?
例えば、「一人きりになれる場」「落ち着ける場」「自由になれる場」「仲間との場」「誰かに求められる場」「素でいられる場」「安心して相談できる場」「刺激的な場」「新たなモノ・コト・ヒトに出会える場」「自己成長できる場」「冷静になれる場」などなど…
自分一人だけでも、多くの要素・意味・価値を居場所に求めるのではないでしょうか?
当然、これらのこと全てを、1つ2つの居場所で満たすのは非常に難しいと思います。
だから“第3の居場所(サードプレイス)”も重要になってくる。
かくいう僕も、教員や今の仕事を楽しんで続けてこられたのは、家族の支え・職場の同僚の支えもありますが、それ以外の人たちの支えや居場所があったから。家庭の事で思い悩んだり、職場の中で失敗したり停滞感を感じたりしたときに、相談できる人や自分とは全然違った面白い人が別の場所にいたり、弱音を吐けたり、落ち着いて自分を見つめ直せる居場所があったりして、本当に助かりました!
では、子どもたちはどうでしょうか?
どんな要素・意味・価値がある居場所があれば、子どもたちは「幸福」や「充実感」を感じるのでしょうか?
その要素・意味・価値を自宅や学校だけで満たすことはできるのでしょうか?
この問いに対する私の1つの答えとして、昨年、会社とは別に「一般社団法人第3職員室」という法人を立ち上げて、今年3月には10代のサードプレイスである「ユースセンター金沢ジュウバコ」をオープンしました。
開館時間には、近隣の中学生・高校生たちがたくさんやってきて、くつろいだり、ボードゲームをしたり、悩みを相談したり、面白い大人の話を聞いたり、新たなプロジェクトを立ち上げたり、自由に思い思いの過ごし方をしています。私が子どもの頃にも、こんな居場所が欲しかったです。ユースセンターに通っているKくんは、当初、学校に行くのが少し億劫で、人前に出たり学校行事にも消極的だったのですが、今では色んなプロジェクトで人前に出て話したり、学校にも楽しく通っています。「第3の居場所(サードプレイス)」があることで、K君が、今までより充実した人生を送っていることを、傍で見ていて感じています。
もちろん「自宅」や「学校」も大切な“子どもたちの居場所”の1つであることは間違いありません。コロナ禍で、色々考えて、「学校の意義」について、否定的な答えを出した子どもたちはほとんどいないことがその根拠です。
ただ、先ほど述べたように、居場所に求める要素・意味・価値は、各自色々ありますし、人が増えれば増えるほど多様になっていきます。
これらを「自宅」と「学校」だけで満たそうというのは、非常に難しいように思います。
オンラインや仮想空間の普及も、子どもたちの居場所が増える・選択肢が増える、という点においては歓迎すべき事ですよね。人口の少ない地域なら尚更と考えます。
子どもたちが、ネットやバーチャル空間を欲するのは、「自宅」や「学校」以外にも“自分の居場所”が欲しいと思っている、というのも大きな要因ではないでしょうか?
そう考えた人たちが多い教育先進国の北欧では、ユースセンターなどサードプレイスも非常に充実しています。
日本でも、都市部だけでなく過疎地域でも、最近サードプレイスが急速に増えてきています。石川県でも、今年だけでユースセンターが2つできました。
また、教員志望者の数が減ってきているというニュースが世間を騒がせていますが、教育に関心がある・携わりたい・支援したいという人の数は、以前に比べて圧倒的に増えているといえないでしょうか?そうでなければ、ユースセンターなどは創れません。
「子どもたちに居場所をたくさん創ってあげたい」「子どもたちに選択肢をたくさん創ってあげたい」「子どもたちに、選択肢はたくさんあるよって気づいて欲しい」
そう思っている人・頼もしい仲間が学校の外に増えている状況は、学校の先生にとってもいい状況のように思います。
教育界のニュースでは比較的ネガティブな側面ばかりに目がいきがちですが、視点を変えて考えてみるとポジティブな要素、希望があることもたくさんあります。
例えば、
今、色んな学校を悩ませている「不登校児童・生徒の増加」は本当に「事態が悪化している」のでしょうか?
もちろん「いいことだ」と断定するつもりはありません。
ただ、昔は「登校するのが当たり前」で、子どもが嫌がっても無理やり登校させられるなど、「無理して登校していた」という児童・生徒が存在したのではないでしょうか?
一方で、今は子どもたちの気持ちに寄り添い、「無理して登校しなくてもいいよ」というスタンスを取られている学校さんが多いのではないでしょうか?
こう考えると、統計上の不登校児童・生徒の数が増えていることを、一概に「良くないこと」とするのは安易すぎる気がします。
昔に比べて、子どもたちの気持ちに寄り添える学校になってきているのは間違いないと、僕は思います。
また、魅力的なフリースクールや通信制の学校ができたりするなど、子どもたちが「今までの学校に登校する」以外に、様々な居場所の選択肢をとれるような環境になってきているのも、増加の一つの要因かもしれません。
こう考えると、必ずしも「事態が悪化している」とは言えないと思います。
そろそろ紙面が無くなってきました…
次回も「選択肢」をキーワードに、今度は“学校の中”で起こっている様々な課題を、色んな視点から、皆さんと楽しくポジティブに考えていければと思います。お楽しみに!
最後に、皆さんにお願いがあります。
これから月1回のペースで、連載させていただくことになっております。
読者の皆さんと一緒に楽しく学び合いながら連載していきたいので、ぜひ、皆さんから「○○について書いてほしい」や「この前書いていた○○なんだけど、私はこう思う」といった、ご要望・ご意見をいただけたら幸いです。
お待ちしております!
問い合わせ先はコチラ↓↓
https://secondtanoshiigakko.wixsite.com/mysite
前田健志
(同)楽しい学校コンサルタントSecond 代表
一般社団法人第3職員室 理事
福井大学教職大学院 コーディネートリサーチャー
ベネッセ教育イノベーションセンター 客員研究員