厳しい暑さが続いた夏が過ぎ、皆さま、いかがお過ごしでしょうか?
私自身は、暑さと過密スケジュールが重なり体調を崩してしまいました。
若い頃の体力はすでにないことを実感し、これがまた一つの学びとなりました。

間もなく2学期が始まる時期です。公開されている時にはすでに始まっているかもしれません。
子どもたちに再び会える楽しみと、皆が元気に登校してくれるかという不安、さまざまな感情が交錯する季節でしょう。子どもたちのことだけでなく、教員の皆さまのことも気にかけております。1学期、一生懸命に取り組んだ教員の皆さまほど、夏休みにストレスがピークに達してしまい、学校に出ることが難しくなるという話を耳にします。

実際に、夏休み中にある先生から相談を受けました。

「数年前に病休をとった経験があります。その年、赴任校が研究指定を受け、急激に業務が増えました。子どもたちとのコミュニケーションが上手く取れず、学級運営もうまくいかず、保護者とのトラブルも重なりました。何とか1年間を乗り切りましたが、春休みに入ると同時に体が動かなくなり、3ヶ月間休職しました。
休職中も「みんなに迷惑をかけている」という罪悪感にさいなまれ、復職後もその罪悪感が続いています。その罪悪感を払拭するために一生懸命働いていますが、常に負い目を感じながら仕事をしています。
どうしたら自分を変えられるでしょうか、何かアドバイスはありますか?

皆様なら、この先生の相談にどのように応えますか?

皆様の意見をお聞きしたいです。

このようなテーマで対話の場を職場で持つことが、職場環境の改善につながるかもしれません。
私自身も20代の頃に似たような状況でうつ病になり、病休を頂いた経験があります。復帰してからも先ほどの先生と同じように罪悪感を感じていました。しかし、30代になってからはそのような感情を感じることはなくなりました。

なぜ罪悪感を感じなくなったのでしょうか?なぜうつ病や病休だったことを隠すことをやめたのでしょうか?

私はこの疑問を先生に投げかけました。

私がうつ病や病休の経験があることを知った先生は、少し安堵した様子で、その理由を考えてくれました。「その経験があるからこそ、同じように苦しんでいる人に寄り添うことができるからではないでしょうか?」と先生は答えました。

実際に、私が担任をしていた生徒が不登校や拒食症になった際、私は自身がかつてうつ病になったことを話しました。
その時はまだ自分の辛い過去、隠したい過去でしたが、苦しんでいる生徒たちに少しでも寄り添いたいと思い、話をしました。
その結果、生徒たちは「元気そうな先生でもうつ病になるんだ」と驚き、「うつ病になっても元気になれるんだ」と希望を持つことができました。その生徒たちは徐々に学校に通うようになり、拒食症を克服し、元気に卒業しました。
今では社会人として活躍しています。

この経験を通じて、私のうつ病や病休の経験は価値あるものとなりました。

現在、全国の学校で先生の病休が増え、先生方も悩んでいます。
もちろん、病気にならないに越したことはありません。 しかし、視点を変えて考えてみると、病休を経験した先生方が学校にいることで、子どもたちや同僚の先生方が苦しんでいるとき、寄り添える可能性が高まるとも考えられます。
そう考えると、病気にならないような対策も大切ですが、病休を経験した先生方の活躍の場を整えることも、今後非常に重要になってくると思います。

様々な先生が学校にいて、様々な活躍の仕方があること。
これが子どもたちにとって、選択肢の多い幸せな学校なのかもしれません。

教員の皆様の赴任先の学校には、さまざまな先生方がいらっしゃるでしょうか?多様性に満ちているでしょうか?それぞれの先生方が、自身の特性を活かして活躍されているでしょうか?

先日、私が参加した教育イベントで一人の高校生が次のように発言しました。

「最近の先生たちは、私たち生徒に寄り添い、多様性を受け入れようとしてくれています。しかし、先生たち自身の世界は多様性に欠けているように思えます。先生たちが苦しそうに見え、自己表現が制約されているように感じます。
私はもっと多くの先生たちの本質的な姿が見たいです。」

この発言は参加した教員の皆様に深く響いたようです。

「子どもの学びと教師の学びは相似形」という言葉が、令和4年度の中教審答申などで見受けられるようになりました。この相似形とは、「学び」だけでなく、「多様性」にも当てはまるのではないでしょうか?
「子どもの多様性と教師の多様性は相似形」、この考えを広めていきたいと私は思います。

「多様性の保証」という観点から考えると、教員採用の基準も毎年同じではなく、変更するべきかもしれません。例えば、病休などの辛い経験をした先生が少ないのであれば、その経験を持つ方を採用することが、子どもたちや学校にとって有益かもしれません。

しかし、多様性について議論すると、「それだと組織がバラバラになる」という意見をしばしば耳にします。

多様性を尊重すると、本当に組織はバラバラになるのでしょうか?

それに対して、私は「対話を継続することで組織は一体感を保つことができる」と考えています。
お互いの経験や教育観を語り合い、違いを理解し、理解できなくても排除しない。

これが実践されているのが、探究先進校として有名な福井県若狭高校です。
教育理念は「異質のものに対する理解と寛容」で、普段から子どもたち・先生たちの対話が至る所でなされています。

探究に懐疑的・消極的な教師たちが、自分たちの立場を語ることで、探究を推進したい教師たちにとっても新たな気づきや学びがあり、その対話を通じて、翌年の探究がさらにアップデートされていくという好循環が生まれています。

私自身も、自分が推進したいことに反対してくれた教師たちがいたおかげで、様々なことをアップデートしていくことができました。反対派がいることは、価値があることであり、組織としても健全です。

また、イライラしたり不満が募っている時は、「違い」ばかりに目が行きがちですが、「同じ教師」という職業を選んでいる時点で、「共通する価値観・思い」もたくさんあるはずです。対話を通じて、その「共通する価値観・思い」を再確認することも大切です。

そろそろ紙面が無くなってきました・・・

次回も “学校の中”で起こっている様々な課題を、色んな視点から、皆さんと楽しくポジティブに考えていければと思います。お楽しみに!

ぜひ、皆さんから「○○について書いてほしい」とか、「この前書いていた○○なんだけど、私はこう思う」といった、ご要望・ご意見があれば、下記からご連絡ください。
お待ちしております!

問い合わせ先はコチラ↓↓
https://secondtanoshiigakko.wixsite.com/mysite

前田健志

(同)楽しい学校コンサルタントSecond 代表
一般社団法人第3職員室 理事
福井大学教職大学院 コーディネートリサーチャー
ベネッセ教育イノベーションセンター 客員研究員

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