約20万人が犠牲となった沖縄戦の悲惨な記憶を風化させまいと、沖縄県立読谷高校(読谷村)の生徒らが毎年、オリジナルの劇を披露している。戦後79年となった今年は3年生、大城樹菜さん(17)を中心に練習を重ね、「心に残るように」との思いを込め、舞台に立った。

劇は同校で約30年前から毎年6月に実施している平和特設授業の一環。集団自決など太平洋戦争で起きた悲劇を演じる「伝統劇」と、戦争がテーマであれば生徒が自由にシナリオを考えることができる「オリジナル劇」から成り、今年のオリジナル劇は、ふとしたことで戦争犠牲者の霊と知り合い、関わり合う中で戦争を考える―という話だ。

「これで合ってる?」「もう少し早い方がいいかな」。本番を2日後に控えた19日、複数の教室で、生徒らがセリフ合わせをしたり、ステージの立ち位置や、舞台袖から出てくるタイミングを確認したりしていた。見どころは沖縄の伝統的な弦楽器、三線の演奏といい、「沖縄の気持ちを表現できれば」と音合わせにも余念がなかった。

実行委員長の大城さんは、小学校低学年のころ、曽祖母から沖縄本島に上陸する米軍の話を聞いたという。ロシアのウクライナ侵攻など、テレビで戦争の映像を見ることが増え、「私たちより下の世代は戦争体験者に触れる機会さえない。悲惨な出来事を知る機会はとても大事だ」と考え、実行委員長に立候補した。

将来の夢は助産師。「働きながらでもいいから、語り部など、何か平和に貢献できるようなことに携わりたい」と話す。

迎えた本番、高校近くの文化センターには保護者ら約200人が集まった。演じ切った生徒らは拍手に包まれ、安堵(あんど)の笑み。大城さんは「成功して良かった。これからも伝統を受け継いでほしいし、もっと多くの人に見てもらいたい」と語った。