村山 和生
(株)ベネッセコーポレーション ベネッセ文教総研 主任研究員
株式会社ベネッセコーポレーションでは、進研模試等を通した高等学校への進路指導支援、大学入試分析、進路説明会講師等を担当。平成24年からはベネッセ教育総合研究所・高等教育研究室にて、シニアコンサルタントとして大学の教学改革支援や入試動向分析、「VIEW21大学版(現:Between)」編集長等を担当。入試動向分析結果は各種マスコミでも取り上げられる。平成28年からはベネッセ i-キャリアにて大学生向けのアセスメント分析や大学IRのための統合データベース開発などを担当。平成29年からは一般財団法人大学IR総研の調査研究部にて、研究員として高等教育全般の調査・研究と教学改革支援、ならびにIRの推進支援に携わる。ベネッセコーポレーション帰任後は、学校支援事業の経営企画業務に従事。令和3年からはベネッセ文教総研の主任研究員として、高等教育領域を中心に「学修成果の可視化」「IR」を主なテーマとして調査、研究、情報発信を続けている。
「リテラシーレベル」に続いて「応用基礎レベル」も公募スタート
令和4年度の文部科学省「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(以下『MDASH』)」への申請が、5月20日に締め切りとなった。「MDASH」は、学生の数理・データサイエンス・AIに関する基礎的な能力の向上を図る機会の拡大を目的として、大学や短期大学、高等専門学校での体系的な教育プログラムを文部科学省が認定する制度だ。令和3年度は「リテラシーレベル」として78校が認定を受け、その中で大学等の特性に応じた特色ある取組が実施されている11校が「リテラシーレベル プラス」として認定された。
令和4年度はこの「リテラシーレベル」に加えて「応用基礎レベル」の公募もスタートした。「リテラシーレベル」が「全ての大学・高専生(約 50 万人卒/年)が身につけるべき『デジタル社会の基礎知識(いわゆる「読み・書き・そろばん」的な素養)』」であるとされているのに対し、「応用基礎レベル」は「文理を問わず、一定規模の大学・高専生(約 25 万人卒/年)が自らの専門分野への数理・データサイエンス・AIの応用基礎力を習得すること」とされており、より専門性の高い教育プログラムが対象となる。今後審査が行われ、8月には選定結果が公表される予定だ。
昨年度「リテラシーレベル」に認定された大学等が「応用基礎レベル」にも申請することに加え、近年データサイエンス系の学部・学科を新設したり、全学共通科目としてデータサイエンス系の教育プログラムを充実させたりする大学等が増えていることから、令和4年度も多くの大学から申請があったものと予想される。
入試における『数学』や『情報』の取り扱いの検討も本格化か
今年度、「MDASH」が認定対象とする「リテラシーレベル」「応用基礎レベル」の両方がスタートすることから、まずはどんな大学等が認定され、そのプログラムの特色はそれぞれどのようなものであるかが注目される。
また、認定校はその教育プログラムの自己点検や積極的な情報公開も強く求められていることから、学生の実際の履修状況や、どのようなテーマや課題に取り組んだのか、またそれがその後の学びにどのように応用されたのかについても着目していきたい。
さらに、例えば「リテラシーレベル」では「学部・学科に関係なく希望する学生全員が受講可能となるような体制・取組」が申請要件になっていることから、認定校を中心に学部・学科の系統を問わず、データサイエンス等を学ぶ学生も大幅に増加することだろう。
折しも各大学では、高校新課程に対応した入試科目の検討が本格化してきたところである。高校の『情報』や『数学』は、数理・データサイエンス・AI教育プログラムとの関係が深い。現状では多くの大学が「検討中」としている『情報』の入試科目としての扱いや、文系の受験生に『数学』を入試でどこまで求めるのかなどについても、「MDASH」認定校からの積極的かつ早期の情報発信があることに期待したい。