谷本 祐一郎
(株)ベネッセコーポレーション 学校カンパニー 教育情報センター長
1985年、岡山県生まれ。2007年、(株)ベネッセコーポレーション入社。九州支社にて、大分県・熊本県・宮崎県の高校営業などを担当し、2016年より東北支社にて学校担当の統括責任者。2019年より現職。講演会・研修会の実績も多数。現在は、大学入試の分析、教育動向の読み解きや、全国の高校教員向けの各種セミナーを企画し、情報発信を行っている。
国公立大学の後期日程の合格者発表期間を迎え、2023年度入試がいよいよ終わろうとしている。最近は次年度以降の入試について質問をいただくことも増えてきた。ここでは、近年の入試環境をもとに2024年度入試の出願戦略を考える際のポイントをお伝えしたい。
年内入試と一般選抜の二刀流でチャンスを拡大する
まず、近年の入試環境を取り上げる上で外せないのは「年内入試の拡大」だろう。年内入試とは、総合型・学校推薦型選抜をはじめとする、12月末までに合否が発表される入試を指す。この年内入試を積極的に導入する大学が増えており、入学者数をもとにすると2021年度から一般選抜を上回るようになった。2022年度の割合は、49.8%と全体のほぼ半分を占めている。
今後もこういった動きが続くと考えられている。2024年度入試の例を挙げると、東京工業大学(総合型選抜および学校推薦型選抜)や北見工業大学(総合型選抜)が「女子枠」を設定した新たな入試を導入する。この例は、女性に限定した入試だが、早稲田大学「新思考入試」、慶応義塾大学「AO入試」など、各大学の理念にもとづき「求める人物像」に合致する生徒を評価する動きが活発になっているのだ。
こういった入試は、各大学が2月を中心に実施する「一般選抜」とは時期が異なる。そのため、第1志望とする大学が自分に合う年内入試を実施する場合には併願することが可能だ。両方の対策を進めようとすると、もちろん負担がかかるのだが、第1志望校の合格に向けた戦略の一つとなるはずだ。
年内入試だけではなく、一般選抜も含めた準備を進める
年内入試の拡大に伴い、高校の先生方から耳にするのは「進学先を早く決めたい」という焦りから、「行きたい大学」ではなく「行ける大学」に志望を変更してしまう、という話だ。ただ、それではもったいない。特に、2024年度入試に臨む18歳の人口は、これまでで最も少ないのだ。10年ほど前120万人いたライバルは、107万人まで減少すると言われている。
ライバルが少なくなるとどうなるのか。簡潔に言えば、合格率が高まる。弊社の入試結果調査のデータをもとに説明する。MACRH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)と関関同立(関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学)の学部を取り上げて、2018年度入試以降の合格率の推移を見てみる。すると、2018年度入試では合格率1~2割だった学力層が、近年は合格率3~4割にまで上昇しているのだ。3割と言うと合格のしやすさを感じにくいかもしれないが、2つ併願をすれば少なくとも1つに合格する確率が約5割となる。
指定校推薦をはじめ、安易に進学先を決めてしまった生徒は大学入学後の早期の退学率が高まる、というリスクもある。受験ではどうしても目の前の「合格」に飛びついてしまいたくなるが、入学後の4年間で自分に合った充実した学びができるかをしっかり考えることが大切だ。繰り返しにはなるが、年内入試だけ、一般選抜だけではなく、自分が本当にいきたいと思った大学を目指して、出願戦略を検討していただきたい。
周りの安全志向に流されずに強気の志望を貫く
教育課程の移行に合わせて2025年度入試のタイミングから入試が変わることは、周知の通りだろう。共通テストの問題、配点、時間などが変更となり、新しい教科「情報」は国公立大の約9割が課すことを公表している。
これらの変更が、2024年度入試に与える影響は、「出願時に安全志向になる可能性」だ。これまでの入試を振り返ると、入試が変わった年は既卒生が減少、つまり、前年に出来るだけ合格に近い大学を受験して、そのまま進学している人が多い、という結果が続いている。ただし、前述のライバルが減少している点も踏まえると、弱気・安全志向の空気に流されず、第1志望校を貫く出願が大切ではないだろうか。
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▼▼開催日時▼▼
2023年3月26日(日)20:00~21:00
▼▼開催形式・視聴方法▼▼
YouTubeで配信(ベネッセコーポレーション教育情報センターYouTubeチャンネル)
※参加無料・申込不要
▼▼本セミナーに関するお問い合わせ先▼▼
㈱ベネッセコーポレーション 学校カンパニー 教育情報センター
jyouhou@mail.benesse.co.jp