谷本 祐一郎
(株)ベネッセコーポレーション 学校カンパニー 教育情報センター長
1985年、岡山県生まれ。2007年、(株)ベネッセコーポレーション入社。九州支社にて、大分県・熊本県・宮崎県の高校営業などを担当し、2016年より東北支社にて学校担当の統括責任者。2019年より現職。講演会・研修会の実績も多数。現在は、大学入試の分析、教育動向の読み解きや、全国の高校教員向けの各種セミナーを企画し、情報発信を行っている。
前回は、大学進学を希望する我が子に対して保護者ができることとは?というテーマで、主に親子の関わり方に焦点をあてて解説をした。
今回は、「高校生の保護者が知っておくべき入試の基本」と題して、
①大学受験にはどんな種類がある?
②国公立大学と私立大学の一般選抜の違いは?
③入試のスケジュールは?
という基本情報の3つに焦点をあてて解説する。
①大学受験にはどんな種類がある?
入試の選抜方式には大きく分けて3種類ある。以下図の通り、一般選抜、学校推薦型選抜、総合型選抜だ。
<一般選抜について>
一般選抜では、大学入学共通テストや各大学の実施する個別試験(個別学力検査)が課される。高得点を取るためには、教科学力が大事!というイメージがある方もいらっしゃるだろう。
この教科学力だが、近年の大学入学共通テストや個別試験(個別学力検査)をみていると、知識を知っているかというよりも、知っている知識を用いて、何を考え、どう判断をし、どうアウトプットするのか、そういった「思考力」「判断力」「表現力」が問われるような問題が増えている。
もちろん知識が不要というわけではなく、そういった入試問題に向き合うには、日ごろから「なぜそうなるのか?」「こうしたらどうなるのだろう?」と自ら主体的に問いをたてて、試行錯誤して考える姿勢を持って学習することも大事だといえる。
また、その大学・学部学科で学びたいという主体的な姿勢を評価する大学も増えている。これは、調査書や自分で提出する書類を通して評価されるケースが多い。
<学校推薦型選抜・総合型選抜について>
「学校推薦型選抜」「総合型選抜」については聞きなれない方もいらっしゃるかもしれないが、これまでの指定校推薦や公募制推薦が学校推薦型選抜と名称を変え、AO入試が総合型選抜と名称を変えた。
これまでの推薦入試というと、学力はどちらかというと一定の基準をクリアしていればよくて、その大学や学問を志望する理由がしっかりあるかといった点が重視されてきた。しかし、2021年度入試から学力試験を課すことがルールとなり、各大学、何らかの形で学力評価ができる試験を課している。
総合型選抜は学校推薦型選抜に比べ、その大学や学部学科を志望する理由が明確であることがより強く重視されている。ゆえに、書類選考や面接、小論文、プレゼンテーションなどの様々な手段で、総合的にその生徒の意欲や適性を評価する大学が多い。しかし、学校推薦型選抜と同様に学力試験が課されるケースも増えており、結論、どの入試選抜方式で受験するにしても、しっかり学力を積み上げることと、一生懸命自分の頭で思考し、大学での学びに意欲をもって受験する姿勢が求められているといえるだろう。
②国公立大学と私立大学の一般選抜の違いは?
次に、国公立大と私立大の一般選抜における入試形式の違いについてみていく。
国公立大は5教科7・8科目の大学入学共通テストを受けて、その後、大学の個別学力検査を受ける。
大学入学共通テストはマーク式で、個別学力検査は記述や論述式である。また、チャレンジできる回数も前期・中期・後期日程の最大3回であるが、中期日程を設けていない大学も多いため、受験を希望する各大学の公表内容をよくご覧いただきたい。
一方で私立大は多様な入試方式が混在する。近年では、受験機会を増やすためにも私立大学が独自に作成した学力試験を受ける一般方式以外にも、共通テストを用いて出願できる共通テスト方式への志願者の集まりも顕著だ。私立大学に出願する際は、合格可能性を高めるためにどの入試方式が自分に合うか、見極める必要があるだろう。
また受験料が国公立大学よりも多くかかるケースが多いため、金銭的事情もふまえてどれだけチャレンジできるか、親子でよく話し合うことをおすすめする。
もし、金銭事情に疑問・不安のある方はこちらの動画もご参考いただきたい。大学受験にかかる金銭事情について、受験料から生活費、奨学金など、幅広く解説している。
③入試のスケジュールは?
最後に、入試のスケジュールについても確認する。受ける方式によって出願を開始する時期が違うので注意が必要だ。
総合型選抜の出願開始が最も早く、次に学校推薦型選抜、私立大学の一般選抜、国公立大学の一般選抜、と続く。しかし、これはおおまかなスケジュールのため、もし志望検討している大学があれば、公表されている大学の募集要項をよく読んで準備を進められることをお勧めする。
加えて、注意点が2つある。
1つ目は、学校推薦型選抜は、大学によって1つの高校から出願できる人数に制限があるケースが多いため、複数人が出願を希望した場合、校内選考が実施されるケースもある。校内選考のスケジュール、方法は高校によって異なるため、志望検討する大学がある際は、学校の先生に早い段階で相談するのがよい。
2つ目は、このスケジュール図では学校推薦型選抜や総合型選抜は早くに合格発表が出るように感じられるかもしれないが、大学によっては学力評価として大学入学共通テストを受けることを必須としている大学もある。その場合、共通テストを受験したあとに合否が出ることになるため、合否結果がわかるのは2月ごろのケースもある。万が一の不合格に備えて一般選抜でどこを受けるのか、などの入試戦略をしっかり立てることが大切だ。
また、大学入学共通テストは9月下旬から出願開始のため、大学入学共通テストを使う予定のある場合は忘れないようにしてほしい。
全ての大学進学を目指す高校生にとって、迷いのない受験を迎えられますように。
受験勉強は、「決断」の連続である。志望校を決めるのも、併願校を決めるのも、受験勉強の戦略を立てるのも、そして、それを実行するのも、全て、高校生本人の自身の決断によるものである。迷いのない受験、それはつまり、悔いのない決断ができたか?であり、そのためにも情報収集を念入りに行うことは重要なことではないだろうか。
近年の入試に関する基本情報の解説動画はコチラ!
※9:58頃にご説明している公募制推薦について補足です。 高校1校あたりの出願人数の上限がある場合には、校内選考が実施されることもあります。 出願を検討されている大学がございましたら、大学の募集要項をご確認いただくとともに、早めに在籍の高校の先生へご相談されることをおすすめします。