谷本 祐一郎
(株)ベネッセコーポレーション 学校カンパニー 教育情報センター長
1985年、岡山県生まれ。2007年、(株)ベネッセコーポレーション入社。九州支社にて、大分県・熊本県・宮崎県の高校営業などを担当し、2016年より東北支社にて学校担当の統括責任者。2019年より現職。講演会・研修会の実績も多数。現在は、大学入試の分析、教育動向の読み解きや、全国の高校教員向けの各種セミナーを企画し、情報発信を行っている。
前回の記事では、入試選抜方式の種類や受験スケジュールについて解説した。
今回は、「高校生の保護者が知っておくべき近年の入試傾向」と題して、入試の傾向を解説したいと思う。
今の世代と保護者世代の社会の違いを知る
まず近年の入試について解説する前に、今の社会について簡単に触れたい。下図は、あらゆる製品のユーザー数が5000万人に達するまでにかかった年数を示している。保護者世代のみなさまは、青春時代のあの頃、インターネットや携帯電話が急速に普及したことを覚えていらっしゃるのではないだろうか。インターネットや携帯電話のユーザー数が5000万人に達するまでには、7年~12年かかった。それに対し、2016年にサービスの始まったポケモンGOは、わずか19日でユーザー数5000万人に到達したといわれている。また、最近では新しいSNSのThreadsが、わずか5日でユーザー数が1億人を突破したという話もある。
つまり、新しいものが社会に浸透するまでのスピードが急速に早まっており、それだけ情報の取得のしやすさも、新しいものに対する抵抗感も、ここ30年で大きく変化しているといえる。最近では生成AIの登場、そして進化が世界を沸かせているが、新しい技術は生まれては新しいものにとって代わり、どんどん生活やニーズに応じで新しいものが誕生するような時代になった。
では、上記のように急速に変化する社会における大学入試とはどういう傾向があるのだろうか。
まず注目したいのは、大学入学共通テストだ。
大学入学共通テスト 出題の傾向
国公立大学の一般選抜では必須である共通テストだが、私立大学でも活用できる大学が増えたり、学校推薦型選抜や総合型選抜でも活用する大学がある。その詳細について今回は触れないため、気になる方は前回の記事をご覧いただきたい。ここでは、おおまかにだが、共通テストの出題の傾向を解説したい。
日常の事象や、よりリアルな社会を意識した素材が扱われたり、会話やグループワークの場面が扱われる問題が増え、考える力や状況から判断する力が問われる問題となっている。
親世代には馴染みのあるセンター試験でもグラフや資料の読み取り問題はあったが、共通テストになってからは、グラフと図と文章があわさったような複数の資料の読み取りが出題されたり、情報がバラバラに書かれていて、自分できちんと必要な情報を判断して読み取り、考える力が問われるような出題がされている。複雑で変化の激しい社会を生き抜くこどもたちに必要な力を身に着けるために、入試問題もより社会で求められる力に近い傾向となっているといえる。
学部系統の傾向
最近の学部系統の傾向をお伝えして終わりたい。社会の変化は学部学科の学びの内容にも色濃く反映されている。
例えば、いわゆる農学部の我々保護者世代のイメージは、私たちの生活にとって重要な農業や、それに関わる生物、環境などを研究する学問のイメージが強かった。しかし、近年では社会問題や環境問題も顕著なので、最先端のテクノロジーやマーケティングを積極的に学ぶケースも増えている。地球環境全体のためになにができるのか?という視点で学ぶ傾向が一昔前に比べて強いといわれている。
また、近年ではデータサイエンスなど情報学系統の学部の新設も目立つ。データサイエンス系の学びは文系からのアプローチ、例えば、情報やデータを使ってよりよい社会をつくっていくためには?などを学ぶ。もしくは、ビジネスと絡めて学べる大学も数多くある。
わたし個人の考えだが、近年はかつての●●学部のイメージや概念とは違った学びの内容が展開されているところも多いため、親自身が近年の学部の傾向を知らないと、我が子にアドバイスをするのは難しいな…と感じている。まずは、知っている大学のホームページを調べてみるなど、子どもと楽しみながら、大学の違いや、学部・学科の違いを研究してみるのはいかがだろうか。
全ての大学進学を目指す高校生にとって、有意義な大学、学部学科の選択ができますように。
受験勉強は、「決断」の連続である。志望校を決めるのも、併願校を決めるのも、受験勉強の戦略を立てるのも、そして、それを実行するのも、全て、高校生本人の自身の決断によるものである。有意義な選択、それはつまり、悔いのない決断ができたか?であり、そのためにも情報収集を念入りに行うことは重要なことではないだろうか。
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※9:58頃にご説明している公募制推薦について補足です。 公募制推薦では高校1校あたりの出願人数の上限がある場合には、校内選考が実施されることもあります。 出願を検討されている大学がございましたら、大学の募集要項をご確認いただくとともに、早めに在籍の高校の先生へご相談されることをおすすめします。
(※)これらの動画は「大学入試のあれこれ」について解説した動画の一部抜粋を使用しています。全編まとめはこちらからご覧ください。