谷本 祐一郎
(株)ベネッセコーポレーション 学校カンパニー 教育情報センター長
1985年、岡山県生まれ。2007年、(株)ベネッセコーポレーション入社。九州支社にて、大分県・熊本県・宮崎県の高校営業などを担当し、2016年より東北支社にて学校担当の統括責任者。2019年より現職。講演会・研修会の実績も多数。現在は、大学入試の分析、教育動向の読み解きや、全国の高校教員向けの各種セミナーを企画し、情報発信を行っている。
高校生の進路・キャリア観の変化
コロナ禍を経て、高校生の進路・キャリアにおいて価値観の変化を感じる機会が増えた。 端的に言うと、「どこの大学に行きたいか」ではなく、「どう生きていきたいか」へのシフトである。学歴重視がゼロになったわけではないが、そういったブランドに捉われすぎずに、自分自身がどう生きていきたいか?どう社会と関わっていきたいか?の延長線上で、志望先が決まってくるイメージである。これは社会全体の価値観の変化の影響もあるが、学校現場で近年実施されている探究活動によって、こういった志向を持つ生徒が増えたようにも感じる。
探究がもたらす「大人との出会い」
全国の学校の探究活動を見ていて感じる探究の良さのひとつは、「大人との出会い」である。生徒にとっての大人は「保護者」か「先生」であることが一般的だ。もちろん、そこからの学びもたくさんあるわけだが、しかし、探究活動は基本的には校内に閉じずに校外に開かれていることが多いため、自然と様々な大人との出会いが待っている。「こんな世界もあるのか!」「こんな考え方もあるのか!」と視野や価値観が大きく広がり、それが自分自身の進路・キャリアに影響する機会となることも少なくない。
探究は進路・キャリアに繋がる
大きく広がった世界、価値観のなかで、今度は、進路・キャリアを決めていくフェーズになるときにも、探究での学びは繋がってくる。
探究学習のプロセスは、課題の設定⇒情報の収集⇒整理・分析⇒まとめ・表現のサイクルで構成されている。学校現場における探究学習のゴールは、この「探究サイクル」を習得することである。また、それを発揮する場面は探究学習だけではなく、日々の授業や学校生活のあらゆる場面でこの探究サイクルを使えるようになることが理想の姿としてある。
そして、進路・キャリアを「決めていく」という言葉に代表されるように、進路・キャリアを創りあげていくプロセスは「決断」の連続である。志望校を決めるのも、併願校を決めるのも、受験勉強の戦略を立てるのも、そして、それを実行するのも、全て、本人の決断によるものである。悔いのない決断のためには、「吟味する」ことが大事であり、「吟味する」という行為をもう少し分解してみると、まさに「探究サイクル」と合致するのである。探究活動で設定したテーマがきっかけとなり進路・キャリアの方向性が見えてきたというケースと、探究サイクルを汎用性あるものとして使えるようになったことで、進路・キャリアを決めていくなかで悔いのない決断ができるようになったというケースと、この2つのケースから「探究は進路・キャリアに繋がる」のではないかと期待している。
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