児童対象性暴力防止法が成立し、子どもと接する人の性犯罪歴を確認できる「日本版DBS」が導入される。野党側は国会審議で制度創設には反対しなかったが、下着などの窃盗罪やストーカー規制法違反が対象外であることに不満を募らせた。性被害を防ぐには、なるべく確認範囲を広げる必要がある一方、プライバシーの面から犯罪歴は慎重に扱わなければならない。法施行後も最適な制度設計に向けた模索が続きそうだ。

5月には、市民団体が下着窃盗やストーカーを確認対象に含めるよう求める署名を3万人分以上集め、加藤鮎子こども政策担当相宛てに提出。これらの罪も人権侵害であるとの考えで、野党側は国会審議で「これが性被害当事者、そして国民の声ではないか」(立憲民主党の塩村文夏氏)と詰め寄った。

しかし政府は、窃盗罪やストーカー規制法違反が必ずしも性加害に当たらないとして、対象とすることに慎重だ。加藤氏は「(性加害に該当するか)誰が判断し、判断の正しさをどのように担保するかといった課題がある」と説明した。

国会審議では、対象の職種を巡る議論もあった。マッチングサイトなどに登録されていない個人事業主のベビーシッターや家庭教師は対象外のため、性犯罪歴があり教職を失った人が就くことを懸念する声が上がった。

衆院特別、参院内閣両委員会はこれまでの審議を踏まえ、犯罪歴や職種の確認対象を広げるよう検討を求める付帯決議を採択した。同法は施行3年後に見直しを検討することが定められており、政府は今後の運用状況を見極める。