「国際卓越研究大学」1号となった東北大の冨永悌二学長は認定を控えた10月、時事通信の取材に応じ、「新たな大学へと変わる意思が評価された。世界に伍(ご)する研究大になり、成果を挙げていく」と抱負を語っていた。

巨額の助成を数校に長期間行う国際卓越研究大制度導入の背景には、日本の研究力低下がある。冨永学長は、国立大が約20年前に法人化されて以降、国からの運営費交付金が減額されているとし、「大学は厳しい環境に置かれ、若い研究者の雇用や研究の環境が整えられなくなった」と説明した。

その上で、「世界では大学の自立性が高く、自由な資金で研究者を招き、成果を出している。社会や企業から資金が入るという好循環がある」と指摘。一方、「日本の大学は自分たちで戦略的な経営をする取り組みがなかった。世界から遅れた最大の要因だ」と述べた。

大学の人件費減については「組織として真綿で首を絞められるように疲弊する」と説明。技術開発が国家間競争になっているとし、「日本では国立大の改革が急務。世界と戦うためにも、大学が戦略的に経営を行い研究者の処遇を変えなくては」と訴えた。

「若い時から自由な発想で行った研究が、最終的には実を結ぶ。ノーベル賞にもつながる」とも語った冨永学長。初年度に約154億円が助成されることに、「研究環境を人材と施設の両面で整える。国内外問わず優秀な研究者を集めたい」と意気込んだ。

同大は東日本大震災を経て「災害科学国際研究所」を設置した。冨永学長は「被災地にある総合大学として、知識は社会に役立てなくてはならないと自覚した。災害科学研究でも世界に貢献したい」と強調し、「国民の負託に応えるため、一丸となって取り組んでいく」と話した。