「行列待ちは解消できるのか?」「歴史上の人物の小説を執筆!」
疑問や好きを追究した課題研究を発表
全国の中高生が多様な社会問題や身近な疑問に関わる探究・研究の成果を発表し、意見交換をして、多様な人と学び合う「ベネッセSTEAMフェスタ2023」が、2023年3月18・25日の2日間にわたり、オンラインで開催されました。参加150チームの中から注目の発表をした2チームを紹介します。
待ち行列理論を活用して、フードコートの混雑軽減策を探る
アカデミック部門
発表テーマ 「フードコートのご飯が食べたい」
発表者 東京都 広尾学園中学校・高等学校 キャピキャピチーム
広尾学園中学校・高等学校の「キャピキャピチーム」は、フードコートが昼食時や休日に混雑するという問題意識から、実地調査で得られた数値を用いて、「待ち行列理論」によるシミュレーションを行い、混雑を軽減する方法を探りました。
シミュレーションには、「平均到着率(λ)」と「平均サービス率(μ)」を基に、「利用率(ρ)」を求めることで、「行列している平均客数(Lq)」「行列の平均待ち時間(Wq)」を導き出す公式を使用しました(スライド1)。
さらに、テイクアウトを利用するかどうかで、それぞれフードコートで費やす平均時間が異なることも考慮した計算モデルを用いました。
実地調査は、神奈川県川崎市にあるショッピングセンター「ラゾーナ川崎プラザ」のフードコートで実施。来客数を計測して各時間帯の「平均到着率(λ)」を算出するとともに、複数店舗のサービス時間を平均して「平均サービス率(μ)」なども求めました。それらの数値を公式にあてはめてシミュレーションをした結果、現在約800席あるフードコートでは、テイクアウト利用者が5割になると混雑する時間帯を大幅に遅らせられること、また、テイクアウト利用者が4割でも、店外に200席を追加すると同様の効果が得られることなどが分かりました(スライド2)。
今後は、再度実地調査を行ってシミュレーションの精度を高め、ラゾーナ川崎プラザに混雑軽減の方法を提案したいと展望を語りました。
社会人サポーターであるIT企業エンジニアの河村聡一郎さんは、「研究結果に基づいて店舗に提案することは、実際に社会にフィードバックができる点で素晴らしいですね。ほかにも、シミュレーションの結果を来店者に周知すれば、混雑を軽減するというアプローチができるかもしれません」と、コメントしました。
歴史小説を執筆して、幕末史への理解と考察を深める
アカデミック部門
発表テーマ 「世界と日本 二面からみる明治維新 ~幕末日本の向かう先は~」
発表者 東京都 豊島岡女子学園中学・高等学校 TG66
豊島岡女子学園中学・高等学校の「TG66」は、政治的事象が複雑に絡み合う幕末史について、新たな視点で考察しようと、自ら小説を書くことで当時の思想や考えを整理するという研究を発表しました。
研究では、当時の状況を多角的に捉えたり、立場の違いによる見方の相違を発見したりできるように、薩摩藩の西郷隆盛と、イギリスの外交官アーネスト・サトウに着目。2人に関する書籍を読み、人物像を考察した上で、それぞれの視点から小説を執筆しました。発表では、小説の一部を朗読しました(スライド3、4)。
そうした研究を通して、西郷の外国人に対する考え方と、サトウらの日本人に対する考え方の違いがよく分かり、立場によってものの見方が大きく変わることに気づいたと言います。さらに、薩英戦争は、イギリスが理不尽に攻めてきたと捉えていましたが、当時の情勢や幕府の対応が複雑に絡み合った結果だったのだと考え直すようになるなど、歴史への理解が深まったとも語りました。
一方で、サトウについては、本人の残した日記が入手できたのに対し、西郷に関しては第三者が記述した史実を基に作成したため、さらに多くの資料を読み込み、資料の信憑性を検証して、考察をいっそう深めたいと、今後の方向性を語りました。
社会人サポーターの岡山大学副理事・狩野光伸教授は、「物語を用いて研究結果を伝えるという方法が新鮮で、感情移入できるよさもあると感じました。物事を捉える時に抜け落ちてしまいやすい『当事者の視点から語る』という手法をさらに発展させてください」と、今後の研究への期待を語りました。
第3回は、奈良女子大学附属中等教育学校のチーム藤木「会話文中の文末表現や一人称によってキャラクターに割り当てられるジェンダー —小学校国語教科書の物語文から見る児童が抱くジェンダー・イメージ—」、郁文館高等学校の緑川チーム「海にも人にも優しい日焼け止め」を紹介します。
ベネッセSTEAMフェスタ事務局