東京大は10日、来年度入学から年間の授業料を約10万円引き上げる改定案を公表した。藤井輝夫総長は報道向け説明会を開き、「理想の教育環境を整えるのは東大の責務だ」と述べた。学内の会議に諮った上で、早ければ今月中に正式決定するという。

国立大の授業料は省令に基づいて定められ、標準額は年53万5800円で、同64万2960円まで引き上げが可能。東大はこれまで標準額を維持してきた。

改定案によると、学部生に対しては、2025年度入学から上限の年64万2960円とする。修士・専門職学位課程でも29年度から同様に標準額から上限まで増額。博士課程については、現行の年52万800円を維持する。

藤井総長は改定の背景について「高等教育のグローバルな競争が激しさを増す中、教育学習環境の改善は待ったなしだ」と説明。改定による増収は、28年度末時点で年13.5億円の見込みで、学習支援システムの機能強化や、施設の情報環境整備などに充てるとした。

併せて学生支援を拡充する方針も明かした。現在は世帯収入400万円以下の日本人学生の授業料を全額免除しているが、25年度以降入学の学部生から同600万円以下に対象を広げる。修士・専門職学位課程でも29年度入学から同様の措置を取る。相談支援窓口も強化するという。

値上げについては、学生を中心に反対意見が上がっている。藤井総長は在学生にも説明を行い理解を求めるとし、学生支援の在り方も共に考える仕組みをつくりたいとした。