加藤健太郎

ベネッセ教育総合研究所 測定技術研究室長/主席研究員

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日本の子どもの正答率は国際平均を大きく上回る

TIMSS(Trends in International Mathematics and Science Study:国際数学・理科教育動向調査)は、児童・生徒の算数・数学、理科の教育到達度を国際的な尺度によって測定し、数学と理科の指導と学習に関連する教育政策を改善するための意思決定のエビデンスとすることを目的に、4年ごとに実施されている。

 

TIMSSは、アセスメントとアンケートの2つのパートで構成される。アセスメントパートでは、第4学年(日本では小学校4年生)と第8学年(中学校2年生)を対象に、算数・数学と理科の到達度を測定する。テスト時間は、小学校4年生は72分、中学校2年生は90分となっている。

 

アセスメントパートでは、各国のカリキュラムや教育目標を分析して計測する「内容領域」「認知的領域」を教科ごと・学年ごとに設定している。出題される問題は知識や応用力を問うベーシックな内容で、公表された算数・数学、理科の問題(TIMSS2023)では、日本の子どもの正答率は国際平均を大きく上回った。

TIMSS2023からCBT化。テスト問題への取り組み方も分析対象に

アンケートパートとしては、児童・生徒だけではなく、保護者、児童・生徒が所属する学校の校長、教員を対象に、質問紙による調査が行われる。調査の内容は、家庭環境、学校環境、クラス環境、児童・生徒の属性、国・地域の状況と、大きく5つに分けられる。

 

児童・生徒へのアンケートでは、算数・数学及び理科の学習に対する態度や学習状況を聞いている。経年比較ができるように、同じ内容を繰り返し聞いている質問項目もあるが、ICT機器の活用やコロナ禍での学習状況などは、今回盛り込まれた。

 

TIMSS2023からの大きな特徴は、アセスメント、アンケートともに、CBT(Computer Based Testing)での実施となったことだ。特にアセスメントパートでは、CBTならではの問題によって、児童・生徒がテスト問題にどのように取り組んだか、どんな取り組み方が好成績につながっているのかなどの分析が可能になったと考えられる。そうしたデータを分析することによって、教科の指導改善につなげられると期待されている。

PART3では、TIMSS2023の注目点である「ジェンダーギャップ」について、ベネッセ独自の調査データも交えて解説する。