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- 【誌面連動】『VIEW21』教育委員会版 2020年度 Vol.2
<フロントランナーに聞く 教育のnext>
子どもが安心して個性を発揮できる場がすべての教育活動の土台となる
~映画「Most Likely to Succeed」アンバサダー
一般社団法人FutureEdu 代表理事 竹村詠美
2021/06/11 09:00
予測困難な社会の中、次代の教育のあり方を教育の最先端で活躍する方に語ってもらう本誌連載「フロントランナーに聞く 教育のnext」の第1回は、映画「Most Likely to Succeed」を日本に紹介し、教育関係者が集うイベントの開催や、教員研修・学校視察などを通じて、21世紀にふさわしい教育を追究し続けている竹村詠美氏です。
本誌記事
竹村氏からは、次代の教育について、次のキーワードが示されました。
●キーワード1:コレクティブ・インパクト
●キーワード2:AI にはできない3つの「C」
●キーワード3:自分らしくいられる安心・安全の場
●キーワード4:「チーム学校」と教育格差の縮小
●キーワード5:子どもが学びをデザインする
詳しくは、本誌記事をご覧ください。
インタビュー動画
本誌では語り尽くせなかったお話を動画(約8分)でご視聴いただけます。
①普通に学校に通えることが、当たり前ではない時代
②コレクティブ・インパクトとは?
③AI の時代に人間が何ができるか?
ご質問コーナー
読者の先生方からのご質問に、お答えいただきました。
※すべてのご質問にはお答えできておりません。ご了承ください。
「日本の教育で世界的にも秀でている部分が、同調圧力として働いてしまう側面がある」。確かにその通りだと思います。しかし、そういう日本の伝統的に優れた部分と、子どもの個性を大切に育てていくことをどのように両立させていけばよいのか。日本的な新しいモデルについて、もう少しヒントをもらえますか?(富山県・中学校教諭)
日本の民間伝承を研究された宮本常一先生のご著書には、対馬の村の寄り合いで全員が納得するまで話し合う光景が紹介されています。現在の効率主義の社会ではなかなか難しくなっていますが、校内や地域の課題について、徹底的に意見を出し合って、よりよい方法を見いだしていく機会を設けることで、多様な意見を恣意的に1つにまとめていくのではなく、対話の中でよりよい解を見いだしていくといった経験を子どもたちが積み重ねていくことができます。同じコミュニティーの仲間としての尊厳を持ち、じっくり話し合うことで、集団としてよりよい解を見いだしていくという日本らしい対話の文化をつくっていくことができるのではないでしょうか。
もちろん、すぐに子どもたちが、かっ達に議論をすることは難しいでしょうから、日常的に対話の時間を持つことも大切です。子ども向けの哲学対話や、市川力先生が提唱されている 「Feel ℃ Walk(フィールドウォーク)」などによって、どの児童生徒からも意見が発信され、多様な視点を楽しめる経験を積むのはよいスタートになります。
「子ども自身のWell-being」とは、具体的にはどのような内容や状態をイメージされていますか?(鹿児島県・小学校教諭)
心・頭・身体が健康で、日々の生活を前向きに過ごせている心地よい状態、すなわち健康で、幸せで、やりたいことに取り組めている中で、人生に満足している状態が「Well-being」です。子どもたちにとっては、十分な愛情を受け、信頼できる大人に心身両面から支えられることで、安心・安全な環境で自己を発揮できることが土台となります。家庭や学校でのストレスが、チャレンジに向かう方向性の適度なもので、遊ぶ時間が十分にあり、夢中になったり、好きなことに存分に取り組めたりする時間のあることが大切です。与えられるものだけではなく、自ら選んだチャレンジにも積極的に取り組む中で、自己の成長の喜びを実感することができ、さらに、友だちや周りの大人(先生を含む)との交友関係も充実していることで、自己肯定感や自己効力感の高い状態をイメージしています。
「50年後に教員という仕事はなくなる」という話がありますが、「AIにはできない3つの『C』」というお話からは、まだまだ教員は必要だと感じます。50年後に我々が職を失わないために(苦笑)、教員は、今もこれからも、最低限何を忘れずに生きていくことが必要でしょうか。(新潟県・小学校教諭)
AIと共生する社会においても、教員の役割はとても大切です。どの時代も将来、社会で活躍するために必要な知識や資質、スキルを育むことは求められるからです。ただし、AIと共生する社会においては、教科書の知識を分かりやすく丁寧に教えるという役割よりも、児童生徒の興味・関心を深い、探究的な学びにつなげていくための「学習者中心の学びの場」をつくるマインドセットやスキルが大切です。カリキュラムデザイナーやファシリテーターといった呼び方もされますが、子どもの置かれている状況に共感を持って接することで、子どもたちが少しずつ高みに挑戦していける、主体性を発揮できる学びの場をつくっていくという気概と、マラソンランナーのような持久力と忍耐力が大事になるのではないでしょうか。