岡山大学 学長特別補佐として、定期的に全国の中高生とのオンライン対話「SDGsユース」を開催しています。先日の対話では、中高生のSDGsへの問題意識を高めるための教育プログラムから始まり、しだいに同調圧力、さらには勉強する意味へと話題が展開しました。今回は、その対話のトピックを紹介します。

渋谷教育学園渋谷中学高等学校には、中学2年生と高校2年生がペアになり、学校の変えたいところをディスカッションする取り組みがあると聞きました。ある生徒によると、いつものクラスだと気を遣ってしまうが、普段交流がない異学年のほうが「互いに言いたいことを言える」と感じたそうです。この事例から「もしかすると同調圧力とは互いに近しい、あるいは似たものであるはずという期待や合意によって生まれるのではないか?」というように対話が展開しました。

そして、同調圧力について対話するなかで「私たちはなるべく当たり障りがない合意形成をする習慣を身に着けてきたのではないか?」という問題提起がありました。ある生徒によると、学校行事等でリーダーを選ぶ際には、立候補ではなく推薦で決まることが多いそうです。そして、推薦や多数決をする場合には、なるべくクラス内で摩擦が起こらないようなクラスメートを選ぶと言います。

このような当たり障りがない合意形成を避けるためでしょうか、三田国際学園中学高等学校では、まず最初にどんなクラスにしたいかを毎年各クラスで議論して決めるそうです。その生徒によると、クラスの目標を皆で共有することで、その目標を達成するのに最もふさわしい人は誰かを考えやすくなったとのことです。

一方、クラス目標を考える際に時々言われる「皆で心を一つに」というようなメッセージへの違和感が、複数の生徒から寄せられました。「何を感じるか、どのように考えるかは一人ひとり違うものであり、違うのが当たり前。心はそれぞれでよいのではないか?」「心はそれぞれだけれども、目標を合意して、必要に応じて皆で同じように行動したり役割分担できるのではないか?」「一人ひとりの感じ方が違うことを前提にすると、道徳教育とは何か?」というように対話が展開しました。

当初の話題から随分遠くまで展開した対話は、最後には勉強する意味へと展開しました。ある生徒が「魅力的な人と話すために勉強して知識を蓄える」と発言し、何人かの生徒が頷きました。さらに「世の中でいわれる優良企業に就職することが、いい就職なのか?」という問題提起があり、「ただ与えられた課題をこなすのではなく、いかにして自分なりに学び、自分の世界を切り開いていくかが重要ではないか?」というように対話が展開しました。

このSDGsユースは、中高生と大人が交じり合い、フラットに対話する場です。私を含めて大人のほうが多少の知識や経験を有していますが、決して正解を持っているわけでもなければ、正解を与えようとしているわけでもありません。一人ひとりが感じたこと、考えたことを持ち寄ることで、各自が自身の世界観を広げたり、ときどき世界観が重なり合うような瞬間を感じています。このようなプロセスを楽しめることが対話の醍醐味なのかもしれません。

小村俊平

ベネッセ教育総合研究所 教育イノベーションセンター長

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