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  • 【誌面連動】『VIEW next』教育委員会版 2024年度 Vol.1

教育がシティプロモーションの有力コンテンツに!
市内の高校生の活躍をウェブサイトで積極的に発信
小・中学校のICT教育に加えて、高校教育の先進性もアピール

2024/06/20 18:30

2024年度に合併20周年を迎える愛媛県西条市では、2017年度に106人だった移住者数が、2023年度には1,518人へと大幅に増加し、うち787人が県外からの移住だった。移住者数が急増している背景には、戦略的な移住施策と、「LOVE SAIJO」をキャッチコピーとして展開するシティプロモーションがある。本記事では、同市のシティプロモーションについて、その有力コンテンツの1つである「教育」を中心に紹介する。

▼本誌記事はこちらをご覧ください(↓)

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西条市 概要

北は瀬戸内海に面し、南は西日本最高峰の石鎚山(いしづちさん)がそびえる。豊かな自然環境による農業や漁業が盛んな一方、飲料や電気機械などの工場も立地する。『田舎暮らしの本』(宝島社)の「住みたい田舎ベストランキング」では、「若者世代が住みたい田舎部門」で2020年〜22年に3年連続で1位を獲得した。

人口 約10万4,000人 面積 510.04㎢
市立学校数 小学校25校、中学校10校
児童生徒数 小学生約5,100人、中学生約2,600人

お話を伺った方

田邊智将(たなべ・ともゆき)

西条市役所
経営戦略部シティプロモーション推進課専門員
兼シティプロモーション推進係長
兼若者活躍支援係長
2017年12月から現職

1.「移住×シティプロモーション」で移住施策を本格化

西条市の移住施策の特徴は、移住施策とシティプロモーションの連動にある。移住推進課が移住検討者に向けたセミナーや移住体験ツアー、空き家バンクの運用など、移住施策そのものは担当し、シティプロモーション推進課は情報発信面で移住推進課の事業をサポートしている。西条市役所経営戦略部シティプロモーション推進課の田邊智将(たなべ ともゆき)係長は、次のように説明する。

「まちのPRや移住情報を提供する『LOVE SAIJO』ウェブサイトや公式SNSなどのオウンドメディア(*1)はもちろん、テレビやラジオ、動画配信サイトなど、様々なメディアを活用し、移住に関心の高い若い子育て世代を中心にアプローチしています。例えば、関東圏や関西圏のローカルテレビ番組でのPRを通じて、その後開催予定の移住セミナーなど関連イベントに誘導しています」(田邊係長)

*1 企業が自社で保有するメディア全般のこと。ウェブサイトやSNS、ブログ、広報誌、パンフレットなどがある。

また、西条市が着目したのは、宝島社が2013年から毎年実施する「住みたい田舎ベストランキング」だ。

「2020年に若者世代部門で全国1位を獲得しました。それを全国の人々に知ってもらおうとあらゆる方法で情報を発信したところ、『なぜ西条市が1位を獲得できたのか?』という切り口で様々なマスメディアからの取材につながりました」(田邊係長)

2.最先端のICT教育の成果を伝え、移住希望者の不安解消につなげる

同市のシティプロモーションにおける有力なコンテンツの1つが「教育」だ。

「コロナ禍以降、リモートで仕事をするケースが増えたことから、自然豊かな環境で子どもを育てたいという子育て世代の移住希望者が増えています。そうした移住希望者は、妊娠・出産期や育児期の環境、自治体からの支援はもちろん、学校教育にも高い関心を持っています。特に気にされるのが、地方の学校でも学力はちゃんとつくのか、受験は大丈夫なのかといったことです。それらの疑問や不安を解消できるように、本市の小・中学校ではICTを活用した最先端の教育活動に取り組んでいることや、国公立大学合格者が多数出ている県立高校が市内にあることなどを、『LOVE SAIJO』ウェブサイトで発信するとともに、移住セミナーでは直接、移住希望者に伝えています」(田邊係長)

同市はGIGAスクール構想に先駆けて、2013年度からICTを活用した業務改善や、ICT教育を推進してきた。2015年度には、文部科学省「人口減少社会におけるICTの活用による教育の質の維持向上に係る実証事業」の指定を受け、中山間地域の中学校区において、校区内の小学校同士をつないだ遠隔授業を国語や算数などの教科で開始(写真1)。1学年1学級でも、子ども同士が多様に交流しながら学ぶ環境を整備した。

「各学校に電子黒板やデジタル教科書などを配備したことで、より分かりやすく質の高い授業が展開されています。先生方に話を聞くと、遠隔授業によって学びが充実することはもちろん、対面でのコミュニケーション力と、リモートでの画面越しのコミュニケーション力の2つのコミュニケーション力が育まれています。また、小学校の時に子ども同士が顔見知りになっておくことで、いわゆる『中1ギャップ』がほとんどなくなり、中学校進学後の不登校生徒数が減ったという成果も得られました。そうした学校の状況も移住セミナーなどで伝えることで、移住後に受けられる教育をイメージできるようにしています」(田邊係長)

写真1:「LOVE SAIJO」ウェブサイトでは、国語や算数などで行う遠隔授業の様子を紹介。授業の動画もアップしている。

3.高校生が活躍する記事は、インナープロモーション(*2)としての効果も

高校教育についても市内にある5校の高校と連携し、高校生の学校内外での活躍を「LOVE SAIJO」ウェブサイトなどで発信している。

「本市には、文部科学省のスーパーサイエンスハイスクールに指定されている進学校や、地域に密着した専門高校などがあり、様々な希望進路に対応することができます。さらに、どの高校も今、探究学習に力を入れていることも特徴の1つです。高校生が、地域の食材を活用した新しい名物料理を開発したり、地元の小学生を対象に昆虫採集のワークショップを実施したりしています。高校生のチームが取り組んだ脱炭素社会の実現を目指した研究は、全国規模の大会で入賞しました。そうした活躍を、高校生の声も交えた記事にして、『LOVE SAIJO』ウェブサイトで発信しています(写真2)。高校の特色を周知することは、本市の魅力アップにつながります。移住希望者だけでなく市民にも幅広く知ってもらうことで、市民としての誇りや市への愛着が醸成される、インナープロモーションとしての効果が期待されます」

写真2:小・中学生、高校生が取り組む特色ある活動を「LOVE SAIJO」ウェブサイトの記事にしてアピール。今では、学校側が記事を書いて提供してくれることもある。

*2 自治体内の住民や企業などに向けて、当該自治体の特長・魅力を訴求すること。転出抑制、Uターンの拡大、住民の口コミ効果などにつながることが期待される。

5つの高校はいずれも県立高校であり、県と市で管轄が異なるため、シティプロモーション推進課では高校と丁寧なコミュニケーションを心がけ、高校を何度も訪れて信頼関係を築いてきた。高校は当初、慎重な姿勢だったが、高校生の活躍を記事にして「LOVE SAIJO」ウェブサイトやSNSで発信することは高校のアピールにもなると伝えたところ、協力が得られるようになった。今では高校側から取材してほしいと情報提供があるという。

「西条市には大学等の高等教育機関がありませんので、子どもたちが進学等でまちを離れるのを止めることはできません。その前にふるさとの魅力に気づいてもらい、まちを好きになってもらえるよう、これからも高校生を含めた若い人へのアプローチを続けていきたいと思います」(田邊係長)

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