全国から集った若手教師が自身の教育活動について報告したり、様々な教育課題について語り合ったりしているオンライン・コミュニティー「若手教師・教育創造MTG(ミーティング)」。2024年度は、第2期のメンバーである12人の若手教師が、それぞれの問題意識や興味・関心に基づいて設定したテーマに、グループや個人で取り組むことを通じて、自分自身をバージョンアップさせるチャレンジをしている。今回は第3回オンラインミーティングで共有された内容を基に、4つのテーマの取り組みの現状をリポートする。
◎これまでの活動
第1回オンラインミーティング 2024年7月12日(金)17:00-19:00(Zoom開催)
第2回オンラインミーティング 2024年9月13日(土)17:00-19:00(Zoom開催)
第3回オンラインミーティング 2024年12月20日(金)17:00-19:00(Zoom開催)
取り組むテーマ「授業において、生徒の力をどのようにして
借りれば、うまくいくのか」
(メンバー:北海道羽幌<はぼろ>高校・小山<こやま>知倫<とものり>先生、山形県立鶴岡中央高校・五十嵐<いがらし>雄大先生、山形県立山形北高校・柴田勝将先生、東京都立田柄高校・島田愛実<まなみ>先生、山口県立岩国総合高校・川端雄也先生、福岡県立筑紫丘高校・徳永拓也先生)
〈取り組みの概要〉
本グループのメンバーは、授業改善の方向性として「生徒の力を借りること」を打ち出し、実際に授業で試行錯誤している。第3回オンラインミーティングでは、その成果や課題を6人の教師がそれぞれ報告した。メンバーが取り組む授業改善に共通していたのが、「生徒に委ねる」「生徒の言葉に耳を傾ける」といった姿勢だ。また、授業において教師が生徒に「一緒に授業をつくっていこう」と呼びかけ、どのような力を、どんな学習スタイルで身につけていきたいのか、そしてどのような方法で評価してもらいたいのかを聞いた上で、単元の学習をスタートさせていた点も共通していた。そして、「生徒と一緒に授業をつくりたい」という思いが具体的な授業改善につながるように、ルーブリックや授業計画表を丁寧に生徒と共有したり、学習の方法を自分で選ばせたりするなど、生徒に学びの見通しを持たせること、生徒が学びについて自己決定する場面を多く設定することを意識していた。さらに、ICTを活用しながら教師によるインプットの時間をできるだけコンパクトにし、その分、生徒に時間を返そうとする実践もあった。
メンバーの多くが自由進度学習を含む自己調整学習を意識しながら授業改善を進めており、生徒からは「自分に合った学び方を選んだり、必要に応じて友だちと協力したりすることで、これまでよりも理解が深まっている」といった肯定的な反応を得ている。しかし、一部の生徒から、「先生による説明が中心の授業にしてほしい」などと要望されたケースもあり、授業のあり方について、生徒との目線合わせに課題を感じている教師もいた。そういったケースや課題についてもグループ内でシェアしながら、授業改善の方向性をより具体化していく予定だ。
取り組むテーマ「教師による教育実践の発信と共有について」
(メンバー:市立札幌藻岩高校・對馬<つしま>光揮先生)
保護者・地域・学校のよりよい関係づくりのためには、生徒が成長していく姿を保護者や地域の人に知ってもらうことが肝要であると考え、学校行事や部活動の様子だけでなく、担当する国語や「総合的な探究の時間」など、日々の授業の様子を発信することがテーマの本取り組み。24年度2学期には、「源氏物語を題材にした探究型学習」「論語とウェルビーイング」(いずれも2年生「古典探究」)など、3つの授業実践をウェブで公開した。「論語とウェルビーイング」では、「ウェルビーイングとはどのような状態か」「なぜ今、ウェルビーイングが重要であると考えられるようになったのか」などを学んだ後、自分自身のウェルビーイングにとって大切な価値観について生徒が考えた。そして、論語の概要とエッセイの書き方を学んだ上で、自分自身のウェルビーイングにかかわりがありそうな論語の文章を各自でピックアップし、「論語とウェルビーイング」というタイトルでエッセイを書いた。後日、11人の生徒の作品を本人の了承を得てウェブ上で公開した。古典作品の内容理解だけでなく、人間や社会などに対する自分の考えを深める力を育む授業実践を社会に広く公開することで、資質・能力を育成する学校と保護者・地域のよりよい関係構築に貢献する取り組みとなった。授業の詳細はこちらからも確認できる。
今後も、校内外の教師と共に学校と保護者・地域のよりよい関係構築に貢献する取り組みを実践していく予定だ。
取り組むテーマ「学校横断型の教員研修」
(メンバー:北海道・私立旭川明成高校・佐藤卓也先生、東京都・私立多摩大学附属聖ヶ丘中学高校・出岡<いずおか>由宇<ゆう>先生、広島県・私立如水館<じょすいかん>中学高校・田栗和馬先生)
教師の資質・能力の向上のための合同教員研修の実現を目指し、3人の教師がチームを結成。24年12月、オンラインで3校合同の学校横断型の教員研修を実施した。合同研修には、管理職を含む計20人の教師が参加。各校から、探究学習の取り組みの状況や、教師のコミュニケーションをより円滑にする職員室のデザインといった特徴的な取り組みが紹介された。その後、各校の実践も踏まえて、今後の自校の教師に必要な資質・能力と、その育成につながる行動について話し合った。参加者からは、「他校の先生から刺激を受けた」「他校の先生に自校について語る中で、自校のよさや課題が整理できた」といった声が上がった。
合同教員研修の根底にある考えは、生徒同士が学び合うように、教師同士も学び合うことができる学校づくりだ。3人の教師は、「知らない、分からない」「教えて」「すごい!」と生徒同士が学び合う「共育スパイラル」の構築を提唱しており、そうしたスパイラルを教師間でも実現できるように、今後も3校合同の学校横断型教員研修を続けていく予定だ。
取り組むテーマ「自学の質を高めるには」
(メンバー:栃木県立足利清風高校・田島<たじま>祥行<よしゆき>先生、福井県立勝山高校・片矢雄大先生)
「自分で学ぶ」という行為の質を高めるために、2人の教師がそれぞれの実践を共有した。自学の質の向上が個別最適な学びの実現には不可欠であると考え、3年生の入試演習のあり方を変えた実践では、生徒が同じ課題を予習し、教師が生徒全体に対してその課題の解説をする一斉授業のスタイルから、生徒の課題の予習状況を授業前に確認し、生徒がつまずいた箇所を重点的に説明した上で、その後の演習では、何を使って学習するかを生徒に委ねるスタイルに変えたという。その結果、生徒は自分の弱点を認識し、その克服のために必要な学習に取り組むようになったそうだ。
また、授業計画表を基に、生徒が自分に合った方法・教材で学習を進める自由進度学習を2学期から取り入れた実践では、授業中、生徒たちから「難しい問題だけど、とりあえずこの方法で試してみよう」などと、諦めずに試行錯誤を続けようとする声が聞かれるようになったという。ただ、教師の説明を中心とする一斉授業を希望する生徒も一定数いるため、3学期以降は、1つの単元の中で自由進度学習と一斉授業の両方を行うなど、授業のあり方を引き続き検討する予定だ。
今年度末には、それぞれのテーマにおいて1年間の取り組みを総括し、成果と課題をまとめる。次回はその模様をリポートする。