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- 【誌面連動】『VIEW next』教育委員会版 2022年度 Vol.2
子どもが「知りたい!」と思うことを題材にしたゲームで、楽しく、意欲的に英語でやり取りをする授業を実現
~千葉県 習志野(ならしの)市立向山(むこうやま)小学校
2022/09/15 09:00
千葉県習志野市立向山小学校では、2015年度から、教育課程特例校として、全学年で英語の授業を行っています。同校には、英語科の専科教員の配置はなく、担任がT1となり、ALTとのチーム・ティーチングで授業を進めています(習志野市における担任の英語指導力向上の取り組みは、本誌P.13〜16に掲載)。
本記事では、同校の3年生の英語の授業をリポートします。
▼本誌記事はこちらをご覧ください(↓)
学校概要
開校 1975(昭和50)年
校長 窪田準子先生
児童数 295人
教員数 33人
学級数 13学級(うち特別支援学級1)
お話を伺った先生
研究主任 吉田満江(よしだ・みつえ)
同校に赴任して6年目。3学年担任。中学校英語科教員の経験を持つ。
3学年担任 香取莉緒(かとり・りお)
同校に赴任して3年目。
授業概要
学年:小学3年生(25人)
教科、単元名:外国語活動、“何が好き?”(全4時間の3時間目)
担当:学級担任・香取莉緒(T1)、ALT(T2)
日常の生活の中でのやり取りに近い形で、
子どもが知りたいと思う題材を設定
今回紹介する3年生の授業は、color、food、sportといった身近なことについて、相手に好みを尋ねたり、自分の好みを伝えたりする表現に慣れ親しむことがねらいだ。子どもは、1・2年生の時の外国語活動で、color、vegetable、fruitなどの表現を学習していることから、本時は、それらにfood、sportのトピックを加え、日常生活の中でのやり取りに近い形になるようにした。
授業が行われた7月時点で、クラス替えをして3か月が経っていたが、初めて同じクラスになった友だちとは、まだ十分になじめていない様子がうかがえた。そこで、友だちの新たな面を知り、仲を深めることをゴールとして、相手のことを知りたいと思える活動になるよう、3年生の担任2人が「スリーボックスゲーム」を考案した。
「color、food、sportの3つのトピックをうまく使おうと考えた時に、スロットマシンのように何が出てくるか分からないようにし、3つの好きなものが出そろったら、その条件に合うクラスの友だちを当てるというアイデアが浮かびました。そこで、今回の授業を行う3年生のもう1人の担任である香取先生と一緒に、活動の具体的な手順を考え、授業案を作成しました」(吉田先生)
先に授業のあった吉田先生のクラスで「スリーボックスゲーム」を行い、その振り返りを踏まえてゲームを改善し、本時の2組で実践した。
1.あいさつ、歌(5分)
授業の導入では、学級担任・ALTと子どもたちが、元気にあいさつを交わした。ALTからの“Are you hungry?” “Are you hot?”という問いかけに、子どもはそれぞれ“Yes, I am.” “No, I am not.”と大きな声で答えた。続いて、大型モニターに映されたアニメーションに合わせて、本時で学ぶ“What do you like?”に対して答える英語の歌を、ジェスチャーをつけながら全員で歌った。
【吉田先生】
本校では、担任がT1として授業を進め、ALTは手本となる発音や、子どもたちとのやり取りを担います。担任は、事前にALTに授業の略案を渡して、本時のねらいや役割分担について打ち合わせをします。
2.ウォームアップ(10分)
黒板に掲示されたcolor、food、sportのカードの内容から、それらが好きな先生を当てるゲームを行った。“What color do you like?”と、全員でリズムに乗って発話した後、ALTが黒板の白いカードを表に返し、その絵に描かれたものを見て“I like yellow.”と発音。同じように、food、sportについても英語でやり取りをし、その3つを好きと言った先生が誰かを、子どもたちが当てた。担任は、“Who is this teacher?”という英語とともに、「誰だと思う?」と、日本語も交えながら授業を進行。3つのカードが出そろうと、子どもたちは素早く手を挙げて、「Mr.A先生!」「校長先生!」などと元気に答えた。
【本時の担当・香取先生】
授業では、まずは私自身が英語を楽しく、たくさん使うように心がけています。2020~21年度に市内の全小学校を巡回していた日本人英語指導助手(以下、TA)から、「文法が完璧でなくてもよいから、たくさん英語を使うことを意識してください」と、アドバイスを受けたからです。英語は得意ではありませんでしたが、意識して使うことで慣れていきました。
3.デモンストレーション(2分)
本時で行う「スリーボックスゲーム」のルールを、担任とALTがデモンストレーションをしながら説明。教室のどこからでも見えるよう、中央で説明を行うと、子どもたちは、担任とALTのやり取りをじっと見つめていた。
「スリーボックスゲーム」の概要
①チーム対抗で、チーム内のメンバーの好きな色、食べ物、スポーツの3種類を当てていくゲーム。
②質問チームと回答チームに分かれ、まずは質問チームが英語で、あるメンバーの好きな色を尋ねる。次に回答チームがボックスからカードを引き、それを英語で読み上げる。読み上げた色が合っていれば、食べ物、スポーツへと移っていき、あるメンバーの好きなものをすべて引き当てるまでカードを引き続け、最後にその人物名を当てる。
③質問チームの全員のカードが出そろったら、質問チームと回答チームを入れ替えて、同じことを繰り返す。
ゲームでのやり取り(例)
質問チーム : What color do you like?
回答チーム :(色のボックスからカードを引いて) I like blue.
質問チーム : O.K. / No.(O.K.の場合は、次のジャンルのカードを引く。No.の場合は、再び同じジャンルのカードを引く)
質問チーム : What food do you like?
回答チーム : I like susi.
質問チーム : O.K. / No.
質問チーム : What sport do you like?
回答チーム : I like soccer.
質問チーム : O.K. / No.
回答チーム : (3つのカードがそろったら)Who?
質問チーム : It’s me!
(次の人に交代する)
4.アクティビティ1(15分)
1チーム4人ずつの6チームに分かれ、2チームずつが組んで、「スリーボックスゲーム」を行った。質問チームが“What color do you like?”と大きな声で問いかけ、回答チームがボックスからカードを引き、好きなものを当てるやり取りをした。
担任とALTは、各チームを回ってゲームの進行をサポート。子どもが大きな声で発言したり、“Me, too.”とリアクションしたりすると、ALTは“Nice!” “Perfect!”と褒めて回った。
5.アクティビティ2(10分)
アクティビティ1で分かった好きなcolor、food、sportをヒントとして、誰が好きなものかを他チームが当てるゲームを行った。まず、AチームとBチームが黒板の前に出て、その他のチームの子どもが回答者となった。A・Bチームに所属するある子どもの好きなものが3つ出そろうと、子どもたちは次々に手を挙げた。「Cさん!」「No.」「Dさん!」「Yes!」「I got it!」と、大いに盛り上がった。
ゲームの進め方
①クラス全員で“What color do you like?”と尋ねる。
② 黒板の前に立っているAチームとBチームが事前にすり合わせた、ある子どもの好きなもののカードを、ALTが示す。AチームとBチームはそのカードを見て、 “I like purple.”と答える。
③同様に、食べ物とスポーツについても、“What food do you like?” “I like peaches.” “What sport do you like?” “I like badminton.” などとやり取りをする。
④その3つが好きな子どもが誰かを、席に座っている子どもたちが当てる。
【吉田先生】
この活動を、私が担任をする1組で初めて行った時は、カードを大型モニターに映したのですが、黒板の前に出た子どもも、席に座っている子どもも、視線が大型モニターに行ってしまいました。そこで、2組の香取先生と話し合い、ALTが前に座ってカードを示す方法に変えることで、子どもたちが互いの顔を見るようにしました。
6.本時の振り返り(3分)
本時の振り返りを「ふりかえりカード」に記入。学級担任に指名された2人が、「ちょっと緊張したけど、楽しかったです」「いろいろな人の好きなものを聞けてよかったです」と発表した。最後に、ALTと英語でじゃんけんをして、活動の楽しさの余韻を残しながら授業は終了した。
「ふりかえりカード」には、「①えがおで楽しく学習できた」「②目を見て先生や友だちとたくさん話せた」「③先生やALTの話をよくきけた」の3項目について、それぞれ3段階で自己評価した後、分かったことや覚えたことなど、感想を書く。
【本時の担当・香取先生】
今回、少人数でのチーム活動と、クラス全体での活動の2種類の活動を行ったことで、子ども一人ひとりの発話量を多く確保できたとともに、他チームの友だちの好きなものを知りたいという欲求を引き出すことができました。それが、クラス全体での活動をとても意欲的に行えたことにつながったのだと思っています。子どもたちは友だちのことを知りたいのだと、改めて感じました。英語が苦手な子どももいますが、今日は友だちと一緒の活動のためか、楽しんでいる様子が見られたのもよかったです。
同校では、子どもたちが意欲的に取り組んだ活動の内容を、学校全体で共有している。よい内容は自分の担当クラスの状況に合わせて取り入れ、その結果も報告することで、活動のブラッシュアップを図っている。
また、学校独自にJLT(Japanese Language Teacher、日本人言語教師)2人を配置。1・2年生の授業は、担任・ALT・JLTの3人で担当している。JLT2人は、いずれも英語が堪能な、同校の在校生の保護者と卒業生の保護者であり、英語がなかなか話せない子どもを授業中サポートする役割をボランティアで担っている。そのように、同校では地域の力も借りて、担任や子どもの英語活動を支えている。
「本校では、子どもの性格や興味・関心などをよく知っている担任が授業のT1を担当し、子どもが意欲的に言語活動をすることができるようにしているのが強みです。小学生の時に学校で英語教育を受けていた若手教員が徐々に増えており、そうした先生は、英語の指導をスムーズにできています。これからも教職歴に関係なく、全員で意見を出し合って、楽しく英語を教えていけるような授業実践を積み上げていきたいと思っています」(吉田先生)