うちの子は、とにかく字が汚いんです。計算テストでは、筆算のメモとして自分が書いた数字を読み間違えて、誤った答えを解答用紙に書き写すことも少なくありません。漢字テストでは、先生から「読めない」と、丸つけさえしてもらえなかったり、作文では意味を取り違えられたりしてしまいます。どういった声かけをしたり、書く練習をさせたりするとよいでしょうか。

(質問者:東京都/小6男子・母)

A奇麗に書くことよりも、早く書けることや書いている内容の方が大切

子どものうちに汚い字を直させたいと思う親心はよく分かります。しかし、現実的には難しいです。それは、私の数十年の教師経験からはっきり言えることです。そのことを保護者の方にも知っておいていただきたいと思います。
字が汚いのは、整理整頓が苦手な場合と似ていて、いくら言っても、何をやっても変わらないものです。厳しく言っても、一時的には直るかもしれませんが、根本的に直すのは不可能でしょう。ペン習字講座のような習い事をすれば、字の形を覚えて、うまく書けるようになるかもしれません。しかし、本人は、字を奇麗に書くことの必要性をあまり感じていないため、習い事の時だけ奇麗に書くようにするでしょう。

もし「絶対に直させよう」と思うなら、子どもが字を書く度に注意し、書き直させないといけません。その度に互いが不愉快な気持ちになるのは確実です。そうしたマイナスの感情を蓄積しながら、膨大な努力と時間をかけて、それで得られる効果がどれくらいあるかというと、極めて限定的なものでしかないと思います。
そもそも、字を奇麗に書かせようとするのは、何のためでしょうか。「学力向上のため」と考えているのであれば、奇麗に書くことよりも、速く書けることの方が大切です。書きたいことがたくさんあればあるほど、頭の動きに字を書くスピードが追いつかなくなるため、字が汚くなりやすいのは当然のことです。字の奇麗さにこだわるよりも、考えていることをすべて文字化できることの方が、学力向上につながります。
「文字を正確に覚えるため」と考える方もいますが、字を覚えるためには、丁寧に一画一画書くよりも、何度もたくさん書くことの方が効果的です。日本では、「文字が奇麗な人は、人格も崇高である」という思い込みがありますが、私は無関係だと思います。字の見た目にこだわりすぎることなく、書かれた内容も含めて判断すべきでしょう。

子どもが作文を書いた時は、字が汚いことを注意するよりも、作文の内容を見てあげましょう。「〇〇してうれしかったです」などと書いていたら、「こういう時はうれしいよね」と、その内容に共感してあげたり、「〇〇みたいでした」などと書いていたら、「たとえ方がユニークで、工夫したね」と褒めてあげたりしてください。
字の汚さが原因でテストの点数が取れないことは、今は諦めるしかありません。子どもが成長して、もっとよい点数を取りたいという気持ちが高まってくれば、読める字を書くようになると思います。