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  • 【誌面連動】『VIEW next』教育委員会版 2021年度 Vol.3

ICTの活用を通じて、子どもの学ぶ意欲を高め、学びを深める授業を目指す
~長崎県川棚町立小串(おぐし)小学校

2021/11/16 09:00

長崎県川棚町立小串小学校では、「主体的・対話的で深い学び」を実現した授業づくりを目指し、タブレット端末や電子黒板などのICTを数年前から積極的に活用しています(詳細は本誌P.20〜25)。本記事では、その一例として、個別学習や協働学習にICTを活用している4年生の理科の授業をご紹介します。

本誌記事はこちらをご覧ください。

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一人ひとりが星の様子を観察した後、みんなで星の動きへの理解を深める

長崎県川棚町教育委員会は、各学校の授業改善や校務の効率化などを支援しようと、2009年度から町立小・中学校4校のICT環境を積極的に整備。2020年度の2学期には、1人1台のタブレット端末、電子黒板や実物投影機を配備した。
同町立小串小学校も、充実したICT環境を生かし、特に「協働的な学び」の充実に力を入れている。2021年9月に行われた4年生の理科の授業を例に、ICTの効果的な活用法を具体的に紹介する。

授業概要

学年:小学4年生
教科、単元:理科、夏の星座(2時限続きの授業)
担当:専科教員 和田宏隆先生
使用ICT:タブレット端末、電子黒板
使用ソフト:ミライシード(オクリンク

1時限目

1時限目は、冒頭で、前時に学んだ「月の動き」を振り返り、それを念頭に置きながら、教員の解説や個人ワークを通じて、「星の動き」について考察を深めた。

1.前時の振り返り(5分)

授業の始まりのあいさつをした後、子どもは、自分の端末の電源を入れ、バッテリーの残量をチェック。残量が少なかった場合は、延長コードを使って電源を確保した。
和田先生は、全員の端末の準備ができたのを確認してから、前時に子どもが取り組んだ、「月の動き」を入力したワークシートを電子黒板に映した。そして、時間の経過とともに月の位置がどのように変化するのかを振り返った。

【和田先生】
「『月の動き』の授業を行った日は、天候が悪く、授業で学んだことをその日の夜に観察して確かめることができない状況でした。しかし、授業中に、シミュレーションフトを使って月の動きを観察していたので、自然条件に左右されることなく、実感を伴った学習ができました」

2.本時の課題を提示(10分)

和田先生は、「今日は、星の動きについて学びます。これまでに見た星空を思い出してみましょう。星も動くのかな?」と問いかけた。少し子どもに考えさせた後、夏の大三角に星座を重ね合わせた画像を電子黒板に投影。その画像は子どもの端末にも送信し、子どもが手元の端末でも確認できるようにした。そして、電子黒板に映し出した星や星座を指差しながら、星や星座の名称を子どもと一緒に確認していった。

【和田先生】
「子どもの端末の表示内容は、教員用端末からも確認できるため、送信した画像が子どもの端末に映っていないなど、表示上の問題にもすぐ個別に対応できます」

3.個人ワーク:夏の大三角を見つける(10分)

次に、和田先生は、星のみを映したワークシートを子どもの端末に送信。ワークシートの画面上に描画機能で線を引く方法を教えてから、「夏の大三角を見つけて線で結び、三角形を作ってみましょう」と呼びかけた。子どもが思い思いの色の線で大三角を作り終えると、2in1タブレットのキーボードを取り外して、タブレットだけを南の空に掲げるように指示。子どもは次々と頭の上にタブレットをかざして、夜空のイメージを膨らませると、ひときわ大きな歓声を上げていた。

【和田先生】
「少しでもリアルな星を観察している状況に近づけることで、夜空のイメージが膨らみ、星への関心を高められるよう、タブレットをかざさせました。実際、画面上で理解していたことが星空と結びついて、具体的なイメージにつながった子どもが多かったようですね。また、三角形を線で結ぶ時、私は暗闇には黄色い線が一番目立つと思い、子どもたちにも勧めましたが、白い線で結んだり、いろいろな色を試したりと、ICTを使うことで子どもたちの感性が豊かに広がっていくような手応えを感じました」

4.個人ワーク・学び合い:星の動きを観察(20分)

和田先生は、異なる時刻の星空を映したワークシートを複数枚、子どもの端末に送信。子どもはそれぞれの時刻のワークシートでも、夏の大三角を見つけて線で結び、時間の経過とともに、夏の大三角の位置が変化する様子を確認した。個人ワーク中には、画像の切り替え方などをICT支援員に質問したり、友だち同士で教え合ったりする姿が見られた。
活動を終えた子どもは、ワークシートを教員用端末に送信して提出。和田先生は、「提出した人は、まだ終わらない人のお助けをお願いします」と呼びかけた。

【和田先生】
「一度提出した後でも、ICTなら修正して送り直すことができます。子どもが再送したデータは上書きされるので、ほかの子どもとの対話を通じて気づいたことがあったら、書き直して再提出する子どももいます。また、授業後は、提出されたワークシートを見て、子どもの理解度をじっくりと確認できます」

【ICT支援員】
和田先生とは、事前に授業の内容や進行について、打ち合わせをしています。ICTの効果的な使い方を提案させていただくこともあります。授業中は教室を回り、操作に困っている子どもや、手が止まっている子どもを支援し、授業が円滑に進むようにお手伝いをしています」(写真下)

2時限目

2時限目は、前時に一人ひとりが行った、夏の大三角を見つけた活動を基に、星の動きについての考えを発表したり、各自のワークシートを共有したりして、理解を深めた。

5.学び合い:星の動きについての考えを発表(20分)

前時の終了までに、子どもたちは各自で取り組んだワークシートを提出。2時限目の最初に、和田先生は、「自分が描いたものを見てほしい人や、気づいたことを発表したい人はいますか?」と問いかけると、子どもたちの手が次々と挙がった。
指名された子どもは、電子黒板で自分のワークシートを見せながら、「午後6時には東寄りにあった大三角は、午後7時には南寄りに移動していました」などと、気づいたことを発表した。
数人の子どもに発表させた後、和田先生は、「今、みんなが発表してくれたように、夏の大三角は、時刻とともに東の空から西の空へ移動していました。星も動くことが分かりましたね。星の並び方はどうでしたか?」と質問。すると、子どもたちから、「変わらない」という答えが返ってきた。

【和田先生】
「子どもに前に出て発表させたのは、電子黒板を活用するとクラス全体でワークシートを共有しやすいことと、自分の言葉で発表したい子どもにその機会を与えて、自信をつけさせたいといったねらいもありました」

6.個人ワーク:授業のまとめ(10分)

和田先生は、この2時間の授業で分かったことをオクリンクの「まとめのカード」に入力するように伝えた。入力を見取りながら、和田先生は、「星の位置だけではなく、並び方はどうだったかな?」などと、学びを振り返れるような声かけを行った。そして、入力を終えた子どもは、教員用端末にカードを送信。和田先生は、なかなか書き進められない子どものヒントになるように、早く送信されたカードを電子黒板に映した。

【和田先生】
「以前は、机間指導で個別に支援が必要な子どもを見つけていましたが、今は教員用端末で子どもの端末画面を見られるので、理解度や進度を確認して効率的にサポートできるようになりました。今回の授業でも、書き進められていない子どもに対して、考え方のヒントを示すなど、進行状況を見取りながら適宜、子どもの理解度に応じて個別に支援できました」

7.学び合い:授業のまとめを発表(15分)

クラス全員がカードを送信した後、子どもが挙手をして考えを発表したり、和田先生が子どもの代わりにカードを読み上げたりして、クラス全体で考えを共有した。
そして最後に、「まとめのカード」を書き直す時間を設定。早く提出を終えた子どもには、「この星空にはほかにも星座があるので探してみてください」と、発展学習につながる声かけをした。

【和田先生】
「発表した子どもの考えだけでなく、自分からは発表できない子どもの考えもしっかり共有できるよう、電子黒板に映すだけでなく、代わりに私が読むようにしています。ICTを活用することで、子ども個々の理解度や性格に応じた発表の仕方が工夫できるので、どの子どもも自信を持てるようになっていると感じます」

今回の授業では、個別学習と協働学習の両方で、タブレット端末や電子黒板などのICTを活用して、子どもの学びを深める様子が見られた。キーボードのタイピングに慣れていない子どもや、機器の操作に戸惑う子どもには、ICT支援員が寄り添い、個別に支援することで、授業はスムーズに進められていた。
同校では、授業の教材準備や機器管理などをICT支援員と連携しながら進め、全学年・全教科においてICTを積極的に活用できるようにすることで、さらに学びの可能性を広げていきたいと考えている。

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