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「若手教師・教育創造MTG」2021年度活動総括
全国の若手教師が教育の課題と未来を語り合う

2022/04/26 09:30

2020年4月から、次代を担う全国の若手教師たちがオンラインで集まり、関心のあるテーマについて語り合ってきた「若手教師・教育創造MTG」。活動2年目となる21年度は、10人の教師が参加し、メンバー自らが対話の場を創造していった。22年3月にオンラインで実施した21年度総括会の内容を中心に、次代を担う全国の若手教師たちが向き合っている課題と彼らの今後の展望を紹介する。

ICT活用、育成を目指す資質・能力の明確化、
キャリア教育など、多彩な実践を報告

9人のメンバーが参加した21年度総括会では、21年度において自身が取り組んできたこと、22年度に向けて取り組もうと考えていることなどを、メンバー一人ひとりが発表した。

北海道・私立札幌第一高校の佐藤亮介先生は、生徒の第一志望校合格に向けた、セルフマネジメント力の育成を重視した進路指導に注力した。志望大学について検討するワークシートや定期考査に向けた学習計画表を作成し、生活・学習習慣の自己評価に取り組ませたという。22年度も、生徒の自走化の支援を続けながら、特に、生徒の成長を可視化する仕組みを構築したいと、今後の目標を語った。

岩手県立遠野高校の佐藤紘大(こうだい)先生が、21年度、特に力を注いだのは、外部団体と探究学習の目標を共有するために必要となるグラデュエーション・ポリシーの設定だ。そして、グラデュエーション・ポリシーを実質化させるために、社会人に参画してもらう授業を実践してきた。そういった授業を通じて、今後も、「授業で育成を目指す資質・能力」と「社会で求められる資質・能力」の繋がりを、生徒に実感させていきたいと語った。

栃木県立矢坂東高校の高秀大作先生は、3年生の担任として、個別指導の充実による進路指導の深化を振り返った。3年生を「大学0年生」と位置づけ、大学入試対策のみならず、様々な活動に主体的にチャレンジする生徒を育てたいと展望を語った。その実現に向けて、生徒と対話を重ねながら、教師から生徒に「学びの主導権」を渡す場面をもっと増やしていきたいと考えている。

埼玉県立朝霞(あさか)高校の浅見和寿先生は、21年度、VIEW next編集部とともに、全国の高校教師を対象としたオンライン勉強会を企画した。そういった様々な機会を通じて発信する自身の教育実践の発表を振り返りながら、「未来の教育を全国のみんなで考え、それぞれの現場に持ち帰ることができる、教師にとっての新しい学びの場をつくりたい」と夢を語った。

メンバー間での刺激と学びを、
自校、そして地域に還元する

富山県立福野高校の高井佳奈先生は、コロナ禍におけるグローバル教育のあり方を模索する中で、地域にある国際社会とのつながりを、生徒とともに目を向けていくことの大切さを強く実感するようになったと、自身の深化を振り返った。また、持続的に豊かな成長を果たす社会人として、プライベートと仕事の両立をどのように図っていくか、なお一層考えていきたいと語り、メンバーの共感を集めた。

三重県立神戸(かんべ)高校の市川歩美先生は、21年度、自身の数学の授業にICTを積極的に導入。また、自分の取り組みを客観的に見直す機会を得るために、地域の有志の教師との勉強会も行った。22年度は、さらに多様なツールを活用した授業展開を模索しながら、そこでの成功や失敗をオープンにし合える風通しのよい教科団を、教科主任を担う自らが率先してつくっていきたいと展望を語った。

島根県立浜田高校の山田伸太郎先生は、教師としての知見を広げるために、刺激を受けた書物をメンバー間で紹介し合う「ブックトーク」を企画・運営するなど、「若手教師・教育創造MTG」におけるメンバーの主体的な活動を牽引した1人である。総括会では、ICTを活用した授業改善の実践を披露した。22年度は、キャリアパスポートのICT化が自身のテーマだと語った。

広島県立広島井口(いのくち)高校の川口広司先生は、数学科の教師として、また、クラス担任として、生徒との信頼関係の構築と、生徒の知的好奇心の喚起に注力した1年間を振り返った。コロナ禍をきっかけに、欠席者が出た授業は必ず撮影し、その動画を欠席した生徒に提供するなど、生徒のことを第一に考えた取り組みを積み重ねてきた。22年度も、生徒との信頼関係を丁寧に築き上げながら、他教科とも連携して、生徒の知的好奇心を刺激する探究学習を追究していきたいと展望を語った。

山口県立山口高校の石田純一先生も浅見先生と同様、21年度は、VIEW next編集部とともにオンライン勉強会を企画。先進的な授業実践を行う教師をゲストに迎えるとともに、「グループワーク」をテーマに、参加した高校教師が互いの実践を語り合う会とした。また、3年生の担任として、生徒の最難関大学への挑戦を支えてきた21年度だったが、石田先生のクラスでは、生徒のおよそ20%が、年度当初の志望を最後まで貫き、最難関大学に出願した。県全体で最難関大学の合格者をさらに増やしていくため、学校を超えて、地域や生徒同士をつなぐハブ的な存在になりたいと、目標とする自身のあり方を語った。

「若手教師・教育創造MTG」のこれから

「若手教師・教育創造MTG」は、21年度、「メンバー自身が持っている課題・関心を、それについての具体的な取り組みも含めて、互いに出し尽くすまで語り合え、深めていける場」として、メンバー内での対話の場を12回にわたって自主的に運営してきた。また、全国の教師を交えたオンライン勉強会を2度開催し、その学びの場を全国に広げた。

2年前に発足した本MTGのメンバーも、今や各学校において重要な役割を担う立場になってきている。22年度は、本MTGの自由度を高め、メンバーの主体的な呼びかけにより開催する形で、活動を継続していく予定である。

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