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  • 【誌面連動】『VIEW next』高校版 2022年度 10月号

【誌面連動】ウェブで詳しく!『クローズアップ! 就職指導』
大阪府立布施北高校 低学年次からの就職観の育成
1年次・2年次

2022/10/14 09:30

本記事では、『VIEW next』高校版2022年10月号の「クローズアップ! 就職指導」で取り上げた職場体験実習(デュアル実習)について、詳しく紹介する。

 

2022年10月号の記事はこちらから

本記事のコンテンツ

1 生徒の実習先の決め方は?

2 生徒には、様々な企業で職場体験をしてほしい?

3 実習先との連携のポイントは?

4 デュアル実習における生徒の評価方法は?

5 「この職場/仕事は合わない」と訴える生徒がいたら?

6 職場体験をよりよいものにするためには?

学校概要

◎設立 1978(昭和53)年

◎形態 全日制/総合学科/共学

◎生徒数 1学年約180〜210人

◎2021年度進路実績(現役のみ)

4年制大は、大阪観光大、大阪経済法科大、大阪人間科学大、摂南大などに延べ11人が合格。短大・専門学校進学50人。就職73人。

お話を聞いた先生

首席・総合学科部長
川本祥也(かわもと・よしや)

教職歴12年。同校に赴任して8年目。英語科。

1 生徒の実習先の決め方は?

【編集部】

布施北高校では、地元企業の協力を得て、2・3年生の選択者が、毎週1回6時間、年間およそ20日間に及ぶデュアル実習に取り組んでいます。長期間の実習になりますが、生徒の実習先はどのように決めるのでしょうか。

【川本先生】

デュアル実習では、「製造」「サービス」「保育・教育」「福祉」の4つの分野の、およそ200の企業にご協力をいただいています。デュアル実習を選択した生徒にはまず、4つの中から希望する分野を第3希望までと、具体的にどういう仕事を体験してみたいのか、どういう仕事はしたくないのかをアンケートで聞きます。

例えば、見知らぬ人とのコミュニケーションに自信がない生徒が、接客業務の多い企業に実習に行ってしまうと、毎週出勤することがしんどくなってしまうかもしれませんから、生徒が苦手なこと、やりたくないことも把握するようにしています。その上で、苦手なことを克服するために、こういう仕事を体験してみてはどうかと、勧めることもありますが、生徒が自分の適性や得意なことを考えるようにするためにも、教師は生徒のやりたくないことを受け止めてあげて、まずは各生徒が望む仕事ができる実習先を割り振るようにしています。そうすることで、「次の実習では苦手な接客をやってみたい」などと、自らチャレンジすることを申し出る生徒も出てきます。

2 生徒には、様々な企業で職場体験をしてほしい?

【編集部】

高卒就職を希望する生徒であっても、社会に対する視野が狭く、3年生の段階でも就職観が醸成されていないことがあると聞きます。布施北高校としては、生徒にはまず、様々な企業で職場体験をしてほしいと考えているのでしょうか。

【川本先生】

本校では、2年次は4月から9月までの期間で1つの実習先、10月から2月までの期間で別の1つの実習先の計2つの実習先に行き、3年次は就職を見据えて1年間、同じ実習先に行きます。3回とも同じ業種・職種の実習先を選ぶ生徒もいれば、毎回異なる業種・職種の実習先を希望する生徒もいます。1年次は、全員が地元企業で2日間、インターンシップを経験しますので、2・3年次にデュアル実習を選択した生徒は、高校3年間で最大4つの実習先で職場体験をすることができます。

例えば、保育士になりたいという意志が固まっている生徒は、3年間を通じて、保育の現場を経験してもよいでしょう。2・3年次のデュアル実習での実習先をすべて保育園にして実習を積めば、大学や短大よりも、多くの実習を経験することになり、それは、就職はもちろん、大学入試の総合型・学校推薦型選抜におけるアピール材料にもなります。

一方で、就職観が未熟だったり、そもそもどういう仕事が自分に合っているのかが想像できていなかったりする生徒には、いろいろな職場を体験することを勧めています。出勤時間が早い職場、人とのコミュニケーションが多い職場、細かなルールを遵守することが求められる職場など、同じ仕事であっても職場は様々ですから、いろいろな職場で仕事を経験し、どんな職場や仕事が自分に合っているのか、あるいは合っていないのかを知ることも大切だと、生徒に話しています。

3 実習先との連携のポイントは?

【編集部】

デュアル実習で生徒を受け入れる実習先の中には、高校生をどのように見守ればよいかを十分理解できているところもあれば、高校生とかかわった経験の少ないところもあると思います。1年間の実習をよりよいものとするために、実習先にどのような配慮をしたり、お願いをしたりしていますか。

【川本先生】

本校のデュアル実習には、自己肯定感が低く、人とのコミュニケーションが苦手な生徒に、職場体験を通じて、自信をつけさせたいという思いもあります。一人ひとりの生徒の得意なことと苦手なことを、率直に実習先に伝えています。そうすることで、実習先は、どういった生徒が来るかを把握し、どういった対応が望ましいかなどを考えたうえで実習を迎えることができるため、実習がスタートしてからの大きなミスマッチ感をなくすことができます。毎回必ず教師が実習先に巡回に行くのは、時間管理が苦手だったり、敬語がまだ上手に使えなかったりする生徒への接し方などで、実習先が困っていないかを確認するためであるとともに、実習先に生徒の様子を聞き、それを踏まえて、学校に戻った生徒を教師が支援するという目的もあります。そうすることで、よりよい実習になればと思っています。もちろん、実習先で、「この生徒は、こんなことができるようになりました」などと、褒めていただくこともたくさんありますから、そうした生徒の成長を把握することも重要です。

また、本校のデュアル実習は、原則1企業につき生徒1人の派遣としています。1つの実習先に複数の生徒を送り出すと、実習先はどうしても生徒同士を比較してしまいます。一人ひとりの成長を見ていただきたいので、原則1企業につき生徒1人の派遣とし、例外的に複数の生徒の受け入れをお願いする場合は、配属する部署を分けていただくようにしています。実習を続ける中で生徒が少しずつ成長していく姿を、実習先の皆さんにも感じ取っていただき、ともに喜んでいただけたらと思っています。

4 デュアル実習における生徒の評価方法は?

【編集部】

デュアル実習での生徒の活動は、どのように評価していますか?

【川本先生】

担当教師が実習先に巡回に行った際、毎回企業の担当者に生徒の様子を聞き取り、教師が目にした生徒の活動の様子だけで評価しないように気をつけています。というのも、実習先によって、生徒のパフォーマンスの見え方が違うからです。例えば、保育園であれば、生徒は子どもと一緒になって様々な活動をしていますが、製造業では1つの作業を繰り返し行っている場合もあり、教師が短時間見るだけでは、適正な評価をつけることが難しいからです。そこで、長く生徒のことを見ている企業の担当者に、当日の様子はもちろん、これまでの仕事ぶりも交えて生徒の成長や課題をお話しいただき、それを基に教師が、目標に対してその生徒はどれだけ頑張ったかという視点で評価しています。

実は過去には、実習先に評価をしていただいていたこともありましたが、実習先の担当者によって、評価の規準・基準にばらつきが出てしまいました。毎回同じ担当者が生徒を見ている実習先もあれば、1日の中でも、生徒を見る担当者が変わる実習先もあります。そのため、今の形のように、実習先と高校の教師が対話をしながら評価することが大切だと思っています。

5 「この職場/仕事は合わない」と訴える生徒がいたら?

【編集部】

毎週1回、6時間の実習は、高校生にはなかなかハードなものだと思います。途中で、「この職場/仕事は合わない」といったことを訴える生徒が現れた場合は、どのような対応をしていますか?

【川本先生】

学校のエンパワメントタイムの時間で、前週のデュアル実習の振り返りを行い、教師は生徒たちのやりがいや悩みに耳を傾けています。生徒たちは、実習先を巡回しに来た教師には、その場で本音は言いませんし、実習日誌にも、なかなか本心を書きません。生徒がやりがいや悩みを率直に明かすのは、学校での友人や教師との会話の中であり、私たちはそこで生徒の言葉を拾い、必要に応じて面談し、実習先に生徒の状況を伝えています。「ほかの業務も経験してみたい」という生徒の要望を実習先に伝えたところ、「仕事に意欲を持っているのなら」と、新しい業務にチャレンジさせてもらえたこともありました。

本校のデュアル実習は、半年または1年と、長い時間をかけます。だからこそ、仕事のしんどいところも、そのまま生徒には見せていただくよう、実習先にはお願いしています。生徒が実習後、悩みや不安を抱えて学校に戻ってくることは当然ありますから、そのような時は、次週までにそれを解決するための支援を行い、その職業が自分には合わないことが分かったのならば、それは今後の職業選択に生きる成果だと、生徒に話しています。

6 職場体験をよりよいものにするためには?

【編集部】

職場体験を実施する学校は近年増えていますが、その取り組みをよりよいものにするためのアドバイスをいただけますか。

【川本先生】

ただ実習先に行かせるだけでは、思うような成果は上がらないと思います。生徒は将来どんなことをしたいと思っているのか、職場体験では何を期待しているのか、それは生徒の将来にどうつながるのかを、まず学校で生徒に整理させ、そして実習中は、実習でどんな気づきがあったか、自分に足りない力は何か、それを学校生活でどのように身につけていくのかといったことを考えさせることで、生徒本人も、自分の成長を自覚できるようになります。その意味では、職場体験と同じくらい、生徒との面談が大切だと思っています。面談を通じて、生徒の職場体験へのモチベーションを高め、目標を意識させることで、「体験」が「学び」になります。

職業体験を実施している学校の多くは、1週間毎日などの短期集中型ですが、その場合は、生徒が悩みを抱えた時に対応する時間がないのが課題になると思います。次の実習までに問題を解決することができるよう、実習先に行くのは週1回としている本校の形式は、職場体験を、学校と企業双方にとってよりよいものにするための工夫の1つとして、ぜひ参考にしていただけたらと思います。

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