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  • 【誌面連動】『VIEW next』高校版 2022年度 12月号

12月号【誌面連動】マイ・ストーリーを語れる生徒を育む進路指導 詳細紹介
東京都・私立桜丘中学・高校
企業との連携による体験活動を取り入れた新コースの設置と
個別指導で、「マイ・ストーリー」づくりを支援

2022/12/20 09:30

「マイ・ストーリー」とは、生徒一人ひとりの「自分のこれまでの学びや活動、その成果や結果に至るまでのプロセス、これからの展望」を指す。

本記事では、『VIEW next』高校版2022年12月号で紹介した東京都・私立桜丘中学・高校の、「マイ・ストーリー」を描き、それを語れる力を生徒に育む取り組みを、さらに詳しく紹介する。

2022年12月号の記事はこちらから

本記事のコンテンツ

1.「セルフスタディノート」で、学習の自律を支援

2.大切にするのは、将来を考える機会の提供

3.様々な活動に挑戦する新コースを設置

4.「マイ・ストーリー」に合致する大学・学部を勧められるように

学校概要

◎設立  1924(大正13)年

◎形態 全日制/普通科/共学

◎生徒数 1学年約400人

◎2022年度入試合格実績(現役のみ) 国公立大は、北海道大、埼玉大、千葉大、東京外国語大、東京海洋大、東京学芸大、岡山大、東京都立大などに52人が合格。私立大は、慶應義塾大、上智大、中央大、東京理科大、法政大、明治大、立教大、早稲田大などに延べ1,244人が合格。

樋山陽亮(ひやま・ようすけ)

進学指導部部長 
教職歴20年。同校に赴任して17年目。地理歴史・公民科。

友利啓智(ともり・けいじ)

進学指導部副部長
教職歴18年。同校に赴任して16年目 。国語科。

古市達樹(ふるいち・たつき)

高校1学年担任(2021年度高校3学年担任) 
教職歴7年 。同校に赴任して4年目。理科。

1.「セルフスタディノート」で、学習の自律を支援

東京都・私立桜丘中学・高校では、生徒の約6割が一般選抜、約4割が総合型・学校推薦型選抜(以下、推薦型選抜)で大学に進学している。一般選抜で合格することができる学力をしっかり育成し、生徒の希望進路や特性に応じて、推薦型選抜の受験を個別に支援する方針を採っている。

学習指導の土台となるのは、家庭学習を記録する「セルフスタディノート(SSノート)」だ(図1)。生徒は、1週間の家庭学習の計画を立て、計画通りに実行できたかを毎日振り返る。そして、週末に1週間の振り返りを記入し、担任にSSノートを提出。担任は生徒個別の前向きな変化を褒め、改善点をアドバイスするようなコメントを書いて、生徒に返却する。そうした生徒と教師とのやり取りを通じて、生徒が自分の学習状況をメタ認知し、PDCAサイクルを回し、自律した学習者になることを支援している。

また、SSノートに、「看護体験をして、ますます実習をやりたくなった」「今日の講演はつまらなかった」などと、自分の思いを書き込む生徒もいる。そうした書き込みから、生徒の状況や志向を把握して、面談での指導につなげることもあるという。

 

 

図1 SSノートに毎日の家庭学習を記録。担任は週1回程度、ノートを集めて、その内容を確認する。
※学校資料をそのまま掲載。

2.大切にするのは、将来を考える機会の提供

進路指導は、「広げる進路指導」を基本方針とし、生徒が1年次から様々な体験を積めるよう、進路学習や学校行事を企画・運営し、学校外の活動にも参加するよう勧めている(詳しくは、『VIEW next』高校版2022年12月号参照)。向学心が高い生徒には、大学主催の学術的なプログラムを勧めることもある。参加申し込み時に参加理由書を提出する場合もあり、その作成と添削は、志望理由書作成の練習にもなっているという。

 

生徒一人ひとりの想いを大切にする同校では、期限を設けて希望進路を無理に決めさせるようなことはしていない。高校3年間のうちに将来像を明確に描けなかった生徒には、受験時に学科を決めなくてもよい一括募集を行う大学を視野に入れることを勧めるなど、生徒が進路を前向きに考えられるようなアドバイスをしている。進学指導部副部長の友利啓智先生は、次のように語る。

「将来像が明確だと、受験戦略が立てやすく、学習意欲も高まります。そうした将来像を明確にするメリットは、生徒に説明しています。しかし、将来像がいつ明確になるかは、生徒によって異なります。大切なのは、低学年のうちから自分の将来について考えることです。興味のあるものがたくさんある方が、将来の選択肢も増えます。教師の役割は、生徒が自分の将来を考えられるようヒントや体験などを提供することだと思っています」

 

1学年担任の古市達樹先生は、担当する「生物基礎」の授業で探究活動を取り入れ、生徒が将来について考える機会にもしている。

「新学習指導要領で『探究』と名のつく科目が多く新設されたように、教科学習では、探究的な学びが求められています。また、本校が行う『広げる進路指導』に照らし合わせて、授業でも生徒が興味・関心を広げ、『マイ・ストーリー』を考える機会を設けようと、探究活動を始めました」(古市先生)

探究活動では、グループごとに探究するテーマを決め、仮説・実験計画の立案、実験、分析、考察、発表、自己評価・他者評価を行った。授業の6時間分を探究活動に充てたが、授業外にも探究活動に取り組むグループもあったという。

「実験計画の段階では、生徒はあれこれ悩みますが、実際に手を動かして実験を始めると、議論が活発化し、実験に没頭する姿が見られました。自分が探究活動に熱中できることを見いだしたある生徒には、大学が主催する探究プログラムに参加することを促しました。すると、生徒は、校外の生徒との交流を深める中で、生命科学への興味・関心をより一層高めていきました。その後も、自らが設定したテーマに関する探究活動を校内でも進め、実験から生じる新たな仮説を教師の助言を得ながらともに検証していきました。そして、総合型選抜を受験し、それまでの活動歴について語ったところ、見事合格を果たしました。授業は将来を見いだす起点にもなることを改めて実感しました」(古市先生)

 

3.様々な活動に挑戦する新コースを設置

2021年度には、将来について考える機会を体系的に提供し、「マイ・ストーリー」を語れる生徒の育成に力を入れるコースとして、「キャリアデザインコース」(以下、Cコース)を設置した(図2)。

図2 桜丘中学・高校のキャリアデザインコースの3年間の学び
※学校資料を基に編集部で作成。

Cコースは、企業や地域が抱える課題をテーマとした探究学習に重点を置いた教育課程を編成しており、そうした学びに関心がある生徒が入学してくる。1年次から企業や地域と連携した探究活動の経験を多く積み上げ、将来像について考える機会を設けることで、自分で「マイ・ストーリー」を描けるようにしている。進学指導部部長の樋山陽亮先生は、次のように説明する。

「推薦型選抜の募集人員が増える中、本校でも同選抜の受験希望者が増えています。そこで、推薦型選抜の受験を重点的に支援するコースを設置することにしました。入学時から自分の軸をつくろうという強い思いを持つ生徒を受け入れ、本校の教育でその思いを具体化させて、それを実現できる力を育成する。そうして『マイ・ストーリー』をしっかり語れる人材に育て上げ、社会に送り出したいと考えました」(樋山先生)

 

例えば、企業の連携による探究学習としては、ピーナッツ・バターを製造する企業とインターンシップを行っている。生徒は、原材料となる落花生の栽培や、加工する工場の建設、商品の製造・販売など、企業活動の一連の流れを体験する。

「学校外での活動を多く体験しているからか、Cコースの生徒からは、『何かを興す』という気概を感じます。学校内外で自分たちの活動について発表する場も多いので、自分の考えをまとめて表現したり、人前で話したりすることがどんどん上手になっていきます」(樋山先生)

写真1 Cコースでは、企業と連携してピーナッツ・バターを製造し、青空市で販売。利益はすべてウクライナの子どもたちの支援金として寄付した。

4.「マイ・ストーリー」に合致する大学・学部を勧められるように

生徒が、自分が体験した様々なことを「マイ・ストーリー」として語れるようになるために、同校が大切にしているのが面談だ。

「生徒の中では、一つひとつの体験がばらばらに存在していて、結びつけることができていません。そこで、面談では、体験から学んだことや気づきを生徒に語らせ、『その体験はこの体験につながっているよね』などと教師が、体験と体験を結びつける、ストーリー化の支援をしています。体験は一人ひとり異なるので、個別に支援することを大切にしています」(古市先生)

2年次の1月には、希望制の志望理由書作成講座を実施。1学年の約4分の1、100人余りの生徒が参加している。推薦型選抜の受験を希望する生徒は、そこから本格的に「マイ・ストーリー」を描いていく。基本は個別指導で、志望理由書の作成と添削、外部講師による模擬面接を通じ、生徒は自分の思いを適切に表現する手法を身につけていく。

「面談を密に行う中で、生徒は、自分の思いを相手に伝える力を高めていきます。生徒の希望進路や学力なども踏まえて、推薦型選抜の受験を視野に入れて志望理由書作成講座の受講を勧める場合もあります」(友利先生)

 

また、推薦型選抜・一般選抜ともに、生徒の希望進路や特性と、志望校とのマッチングも十分検討を重ねる。

「生徒の学力や入試方式・科目に鑑みると、志望校の合格は難しいと判断せざるを得ない場合があります。そうした時に、生徒の希望進路をかなえつつ、合格可能な大学・学部を紹介することは、私たち教師にできる最大の支援です。もちろん、生徒が納得する大学・学部であることが重要です。生徒がどういった経験を積み、どんな志向を持っているのかを、それまでの面談で的確につかんでおくとともに、常日頃から大学の情報に意識的に触れ、各大学が求める人材像に精通したり、力を入れている研究内容に理解を深めたり、入試の出題傾向を把握したりと進路指導の知見を高めることで、それぞれの生徒が描く『マイ・ストーリー』に合致するような大学・学部を勧められるようにしています」(古市先生)

 

今後の課題は、そうした個別支援を組織的に行う体制づくりだ。

「生徒一人ひとりが納得し、満足することができる進路指導を行うために、今まで以上に担任をバックアップする体制が必要だと考えています。学校全体で生徒の希望進路をかなえる組織を築いていきます」(樋山先生)

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