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教師は生徒づくり、学校経営は教師づくり
関西国際大学客員教授
神戸山手女子中学校高等学校 校長
平井 正朗

2022/11/02 09:30

『VIEW next』高校版2021年8月号の「指導変革の軌跡」、『VIEW next』教育委員会版2021年Vol.3の「特別企画」のコーナーにご登場いただきました、平井正朗先生(神戸山手女子中学校高等学校校長、大阪市教育委員会 委員(教育長職務代理者))に、「チーム学校」による個別最適な学びと協働的な学びについて、寄稿いただきました。

グローバル化、DX化が加速し、コロナ禍の中、学校文化が変容しつつある。まさに予測不可能な時代である。教育現場では学習指導要領の改訂、大学入試改革が進められ、「チーム学校」による個別最適な学びと協働的な学びが求められている。言い換えれば、カリキュラム・マネジメントを通じたICTによる到達度に合わせた学習と「主体的・対話的で深い学び」による探究学習の標榜である。ウィズ/アフターコロナと言われる昨今、これらはより一層、加速した感があるが、同時に、課題も見えてきた。

ICT分野では、EducationとTechnologyという語を組み合わせた EdTech教材が次々と開発されている。個別最適な学びにおける生徒側の課題としては、学習習慣の定着とモチベーションの維持、教師側の課題としては、教育機器への習熟とファシリテーターとしての役割が挙げられる。教師の腕の見せどころは、計画的に学習が進められるよう方向づけするだけでなく、勉学に対する動機づけ。さらに、支援員等の力を借りて、ICTに慣れ、担当教科のティーチに加え、生徒個々が「自律」し、自己効力感を育めるようファシリテートして、非認知能力を育成することが必要だ。コロナ禍で休校措置が取られていた時期は双方向型、つまり、同期型オンライン学習が主流であったが、今や「学びの継続」を維持しつつ、自学自習する非同期型オンライン学習を定着させなければならない。

他方、協働的な学びは、探究学習を中心に展開されているが、キーワードは産官学協働。SDGsなど、リアルな社会問題にチャレンジする「産官」の姿勢は、これまでの暗記中心主義に一石を投じるものである。世界中で起きている様々な情報を同じ次元で捉え、ディスカッションを通じて、自ら思考・判断し、自由に表現し、行動する力を鍛えてくれる。それは何のために仕事をしているのかという本質的な問いかけに直結し、社会をどう変えていくかというムーブメントを起こす萌芽となる。

学校教育の歴史をひもとけば、そのような取り組みは以前から謳われてきた。教員の仕事量が変わり、働き方改革が叫ばれる中、その成否は「チーム学校」としての組織的な運営に尽きる。中高大というフィールドの中で、「教師は生徒づくり、学校経営は教師づくり」に邁進する日々である。

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